「文学の中の岡山」では、公益社団法人全国学校図書館協議会:Japan School Library Association(略称:全国SLA)学校図書館スーパーバイザーであり、岡山市文学賞運営委員会 文学によるまちづくり部会委員の高見 京子さんに、岡山ゆかりの作家、作品などについてご紹介いただきます。

青山融氏の訃報に接する。今年(2025年2月)のことだという。ショックである。こんなに世の中に興味関心を持ち続け、周りの人を楽しい思いにさせてくれる人もいない。学問を超える知的な世界が広がる。
『岡山弁JAGA!』は、笑いながら学び、楽しめる本だ。岡山弁を、青山さんなりに解析、説明、そして楽しもうとしている。
この本の巻末に「とじこみ付録」として、『岡山弁会話入門講座』(株式会社アス 1986年発行 岡山若者新書1)がすべて掲載されているが、これがめっぽう面白く、当時話題になったのだった。
「第1課(でーいっか)は、「せとねーけーのなげーはし」
<対話>
あの なげー はしゃー なんじゃろー?
せとねーかゆー またぐ せとおーはしじゃー
<訳文>
あの 長い 橋は なんだろう?
瀬戸内海を またぐ 瀬戸大橋だ。」
そして解説(【aiあい】は【e: えー】と変化)、例、練習問題、解答、と続く。
『岡山弁会話入門講座』から12年後に発刊された『岡山弁JAGA!』は、さらに進化して、巻頭は「岡山弁のある風景」として(1)女子高生の情景 (2)中年社員の真実 (3)おばさまの時間 (4)恋人たちの場面 の会話が紹介される。(1)はこんな感じ「せーぶつぁーどーじゃった? できた? そねーにむつかしゅーなかったなー。ちゅーかんよりゃー できたけーど」
そのあと「岡山弁再発見」として40もの項目の解説が続く。最初は「岡山弁は英語に近い?」「ではクイズです。次のアルファベットを発音して、共通語に直して見てください。 (1)ADD (2)KDD (3)DDD」 わからない人は本を読んでみましょう。
岡山弁の話だから、当然話される場面は岡山。女子高生の会話の背景は岡山城。「奉還町のアーケードは赤―けーど」。『獄門島』(横溝正史)の岡山弁とともに六島の写真(キャプションは「獄門島のモデルは笠岡諸島最南端の六島だという」。
吉備人出版の山川隆之氏が、雑誌「うったて」の中で、「岡山弁、ミステリー、古墳、映画、日本酒…… 文化を遊び続けた天才編集者」として、追悼の文章を載せられていたが、まさに言い得て妙。
「文化を遊ぶ」!『岡山弁JAGA!』も、その通りの本だ。
(この後『岡山弁JARO?』も発売され、青山氏の写真も掲載されているのだが、ここでは『岡山弁会話入門講座』も収録されている、この本を紹介した)
1949年、津山市生まれ。大安寺高校、東京大学卒業後、JTBに入社、岡山市にUターンして、「月刊タウン情報」編集長などを経て、「オセラ」編集長。岡山弁協会会長も務めた。今年(2025年)2月に死去。
古墳好きで家の墓石は前方後円墳にするほどであり、シャーロックホームズと横溝正史を愛するミステリーファン、岡山が舞台の映画作品の岡山弁指導をされ、酒やカラオケを愛する、遊び心旺盛な文化人であった。
2023年10月に、岡山市は「ユネスコ創造都市ネットワーク文学分野」に加盟した。
岡山(市だけでなく県全体で)は、「文学創造都市おかやま」の名に恥じない、数々の実績があるが、私は特に岡山出身(ゆかり)の作家たちが多いことを挙げておきたい。その作家たちを中心に、それぞれの作品の中に岡山の描写が多いこともうれしいことである。
これから、このコーナーでは、読み応えのあるそれらの作品と、岡山がどのように文中で書かれているかを紹介していきたい。作品が一都市だけに向けて書かれていることはもちろんなく、普遍的なものであるのだが、その作品を味わうと同時に、身近な場所が文中にあることで、より岡山に親しみを感じたり、その場所を歩いてみたりしようと思っていただければ幸いである。
「文学」も広くとらえ、ノンフィクションも、映画など他のメディアなども含み、比較的新しい作品を取りあげていきたいと思っている。愛読してくださるとうれしい。
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