「文学の中の岡山」では、公益社団法人全国学校図書館協議会:Japan School Library Association(略称:全国SLA)学校図書館スーパーバイザーであり、岡山市文学賞運営委員会 文学によるまちづくり部会委員の高見 京子さんに、岡山ゆかりの作家、作品などについてご紹介いただきます。
ウクライナや中東、南アジアなど、世界各地での戦争で、多くの人が犠牲になっている。日本も無関係ではなく、遠い国の問題だと言って無関心ではおられない。また、実際80年前、この岡山も空襲があり、多くの人が犠牲になったのだ。
昭和20年6月29日、がれきの中から助け出された女の子の一生を追った、小手鞠るい作、小説『アップルソング』。救い出した青年のモデルが、小手鞠の父親、川瀧善正氏である。(別稿)
川瀧氏は、若い時から身近な出来事をスケッチにしてたくさん残し、まんが自分史として4冊にまとめ、娘に託し、『川瀧少年のスケッチブック』という本にもなった。この本もそのスケッチを基にして、昭和史を振り返り、一人の男の戦争と、昭和の激動が臨場感をもって迫ってくるものとなっている。
特に、岡山空襲の辺り。「昭和20年6月29日、午前2時30分から岡山空襲、30日朝、西大寺(今の東岡山)から線路の上を歩いて来てみると、南方の家並みは残っていたが、何と、校舎は焼け落ちて、跡形もない!」として、岡工のスケッチ。そこから東を見ると、天満屋ビルと電話局のビルだけが立っており、「市内の焼け跡の惨状は目をおおうばかり。」「寝込みを襲われて直撃弾を受けたり、防空壕や地下鉄で窒息死したものも多かった。死者1,725人 家屋焼失 3万5196(約66%) 負傷927人 10万4,600人罹災」とある。
岡山駅に行くと、「貨物倉庫いっぱいに空襲で亡くなった人が3000体並べられている地獄図に大ショックをうける!」「やがて、8月6日、広島へ原爆。そのうち、岡山駅へ入る列車で顔や手の焼けただれた人らが担架で運ばれてきだし『原子爆弾』だとわかるまでは様々な流言が広がっていた」もちろん、スケッチとともに。
戦争の体験者が身近に少なくなってきた。今が最後のチャンスだ。しっかり聴いておきたい。体験してない者も、見聞きしたことをもっと語り継いでいきたい。
「つい昨日」、身近にあったことなのだ。
2023年10月に、岡山市は「ユネスコ創造都市ネットワーク文学分野」に加盟した。
岡山(市だけでなく県全体で)は、「文学創造都市おかやま」の名に恥じない、数々の実績があるが、私は特に岡山出身(ゆかり)の作家たちが多いことを挙げておきたい。その作家たちを中心に、それぞれの作品の中に岡山の描写が多いこともうれしいことである。
これから、このコーナーでは、読み応えのあるそれらの作品と、岡山がどのように文中で書かれているかを紹介していきたい。
作品が一都市だけに向けて書かれていることはもちろんなく、普遍的なものであるのだが、その作品を味わうと同時に、身近な場所が文中にあることで、より岡山に親しみを感じたり、その場所を歩いてみたりしようと思っていただければ幸いである。「文学」も広くとらえ、ノンフィクションも、映画など他のメディアなども含み、比較的新しい作品を取りあげていきたいと思っている。愛読してくださるとうれしい。
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