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♯15 女性アスリートに伝えたい月経の話

[2018年8月22日]

ID:43249

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練習量・BMIと月経異常との関係性

練習量とBMIが無月経に影響を与えるリスク因子となるという発表があります(日本産婦人科学会分担研究(若年女性のスポーツ障害に解析、研究開発代表 藤井知行))。つまり練習量の多い全国レベルの運動選手ほど、また体重を減らすことを求められる競技(持久系、審美系など)ほど月経異常をおこしやすいという結果です(参照:競技特性にみた無月経の割合)。逆に当然ながら月経痛やPMS(月経前症候群。月経前の精神的・身体的不調)は女性選手活動に影響を与えており、選手の半数以上が運動に支障を感じているとのことです。しかし治療している選手は30%程度で、しかもそのほとんどが鎮痛剤での治療だということでした。

競技特性別無月経割合グラフ

競技へのコンディショニングのための適切な治療

私は性教育講演では必ず月経不順のこと、月経痛やPMSの内容や対処法について語っています。すると講演後、今まで我慢してきたが対応できることを知って連絡してきたという生徒が必ず何名もいます。その中には国体レベルの女子生徒も多数含まれていました。ホルモン剤を使って試合当日の月経をずらすことすら知らない生徒もたくさんいました。ほとんどの生徒は指導者から月経随伴症状に対する知識、対処法を教えてもらっておらず、月経痛に関して指導者に相談してない人もたくさんいました。また月経不順に関してはほとんど相談しておらず、長距離選手の生徒がある男性指導者に月経が止まった話をすると、「良かったじゃないか。これで月経で競技が邪魔されることはなくなったな。」「月経がきちんと発来するような「体」になってしまっては競技力が低下する。」とまで言われたそうです。また私の調査では、運動部の顧問や指導者の半数以上が生徒の月経の状態を把握していないということでした。欧米においては83%の女性選手が低用量ピル・ホルモン剤(OC/LEP)を使用しているそうですが、日本は1割にも満たない使用率です。もちろん婦人科を受診している生徒もあまり多くありません。月経に伴うコンディショニングや貧血の問題、懸念に対して適切に対応しないと、月経が無い方が運動しやすいという誤った考えに繋がってしまいます。きちんと月経があることは、思春期から性成熟期の女性アスリートにとって、将来の妊娠が可能であるという指標でもあります。少なくとも運動部の生徒であれば一度は婦人科を受診して、医師に月経状況の評価や今後の計画を相談しておく必要があると思います(参照:月経移動についてどう思いますか?)。また月経不順や月経随伴症状を訴える生徒に対して積極的にOC/LEPを含めたホルモン治療を行う必要があります。

月経移動についてのアンケート結果の円グラフ

能瀬さやか 22(1),122-127,日本臨床スポーツ医学会誌

女性ホルモンの減少と骨折

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは骨が壊されて行くのを予防しています。骨はあらゆるミネラルの貯蔵庫です。壊されてミネラルを体に供給し、食事から摂取したミネラルはまた骨に貯蔵されます。つまり、骨は常に崩壊と再生を繰り返しています。閉経を迎えた女性が急速に骨粗しょう症になる原因は、その骨の崩壊と再生をコントロールしているエストロゲンの急速な減少です。同じ事は若い女性にもおこります。特に10代後半は骨量がピークを迎えるときであるため、このときにエストロゲンの分泌が充分でなければ骨量は高い値に到達することができず、折れやすいもろい骨になります。さらに運動部の生徒は骨に負担をかける事が多いので、月経が不安定で、骨量が十分では無い場合は簡単に骨折を引き起こしてしまいます。実際、私が知っている長距離走の女子生徒は良く骨折をするのでエストロゲン量を調べたところ、平均の三分の一の値でした。運動部女子生徒の月経を安定させることは骨量の維持に関してもとても大切な事なのです。

月経に関する不調、不安があればまずは相談を

もちろんこれらのことは運動選手に限られることではなく、一般生徒に関しても同様です。月経が3ヶ月以上こない人、3週間以内に2回以上来る人、月経が10日以上続く人、月経痛がひどく毎回鎮痛剤を服用する人、試験や試合、大会、実習などで月経をずらす必要がある人は必ず婦人科を受診していただきたいと思います。検査も必要になるでしょうが、採血検査とお腹の上からの超音波検査くらいです。特に恥ずかしい検査や怖い検査はありません。私は月経が開始した時点で、婦人科を受診する様に勧めています。月経開始直後にかかりつけの婦人科を見つけておけば、月経に関する今後の対処法の相談やトラブルになったときに気楽に受診できるようなります。
先生や親は積極的に生徒に婦人科受診を勧める義務があります。そしてその中心的な存在が養護教諭です。子供達の幸せと未来のためにまずは相談をするよう、声掛けをしてあげてください。

産婦人科の写真

上村 茂仁

上村茂仁さん

「ウィメンズクリニック・かみむら」院長

川崎医科大学、岡山大学大学院を卒業後、米国のワシントン大学に留学。岡山大学病院、ペリネイト母と子の病院などに勤務した後、2004年に岡山駅近くに「ウィメンズクリニック・かみむら」を開院。10代の中学生、高校生でも気兼ねなく通える女性の為の総合診療クリニックの院長として日々診療を行うかたわら、全国で性教育やデートDV防止の講演を行っている。