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「小さな6次産業」の起業と身の丈にあった売れる商品作り(2019年取材)

[2024年3月28日]

ID:56862

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耕作放棄地の活用

活動団体

そば処「三味庵」を営む代表の景山氏の写真

●団体名 「NPO法人 日本モトショク」

●団体の概要
主な活動場所:岡山県岡山市北区足守
構成員: 11 名
代表者:景山 勝已
設立: 2012年

●これまでの活動
2012年:「NPO法人日本素食協会」設立。
2015年:事業内容変更を機に、名称を「NPO法人日本モトショク」に変更。
2018年:「蕎麦でイキイキ実行委員会」が岡山市「地域活力創出事業」採択。
2019年:岡山市「地域の未来づくり推進事業」採択。

活動内容

活動のきっかけ

長年、菓子メーカーに勤務した景山氏は、企画・製造・販売の責任者を歴任した経験を生かし、健康的な食生活の提案や取り組みを行う「NPO 法人日本素食協会」を設立。主な活動内容として、台湾素食(台湾のベジタリアン向けの料理)の輸入を行っていた。その後、事業の目的を「耕作放棄地の再生」にシフトし、名称を「日本モトショク」に変更。蕎麦と大麦を栽培し、それらを使ったメニューの提供や商品開発に取り組んでいる。耕作放棄地を減らし、消費者の健康増進につながる事業を継続して展開していくために、蕎麦や大麦の六次産業化にも挑戦している。

蕎麦づくりは2013年からスタート。収穫した蕎麦を岡山市北区足守に構えた食堂で自ら打ち、客に提供している。依頼があれば出張して蕎麦打ち教室も行っている。大麦は販売に加えて、精麦の際に出る「ふすま」を使ったシフォンケーキの製造・販売に向けて準備を進めている。

主な事業

蕎麦と大麦の栽培

精麦された大麦「キラリモチ」の写真

耕作放棄地を再生させ、蕎麦(サチイズミ)と大麦(キラリモチ)の栽培を行っている。作付面積は市内2箇所で約6000平方メートル、8月から11月は蕎麦、11月から5月は大麦を栽培。北区御津・牧石・足守地域で活動を行う「蕎麦でイキイキ実行委員会」とも連携している。

蕎麦店の経営、蕎麦打ち技術指導の実施

「三味庵」では3種類のそばが楽しめる

北区足守に蕎麦店「三昧庵」を構え、景山氏自ら蕎麦を打っている。メニューはビーガン(純粋菜食主義者)にも対応。少人数制の蕎麦打ち教室を行い、技術指導に努めている。

大麦を加工した商品の製造販売

大麦の健康機能性に着目し、精麦の工程でできる「ふすま」を使ったシフォンケーキの製造・販売に向けて準備を進めている。大麦はアレルギー対象品目から除外されているため、より多くの人に食べてもらえるおやつとして期待されている。

活動資金について

蕎麦店での売上、岡山市「地域の未来づくり推進事業補助金」(2019年度から)、団体の事業費を活動資金としている。

仲間集めのコツ

目標を明確化し共有すること、自分の想いを周囲に伝えることで、理解のある協力者を得ることができた。蕎麦店の大家は、足守の文化を大事にしながら、竹林を維持管理する活動をしており、岡山市「地域の未来づくり推進事業」関連の集まりで出会い、活動の情報交換を行ったことから交流がスタート。蕎麦店開店の相談をしたところ、快く協力してくれた。

活動のポイント

会社員時代に培った商品開発の経験と品質管理のスキル、ライフワークとしての、食生活と健康に関する知識の積み重ねが、事業のベースとなっている。栽培品種は、「健康増進効果が期待できること」「維持管理作業が少なく、収穫後の製品展開がしやすいこと」を考慮し、蕎麦と大麦を選定。味にこだわるのはもちろんだが、雑草が繁茂する時期と生育時期がずれる品種を選ぶことで、耕作放棄地活用の課題である雑草対策の負担も軽減できた。

さらに、これまでの人脈を生かし、他団体との協働による事業展開や、交流イベントを開催。就労支援施設に農作業を委託し支援の場を提供したり、教育施設へ大麦を納品したり、周囲との様々な取り組みのなかで相乗効果を生み出している。

活動継続の秘訣

想いを共有する仲間を作ることが事業継続には大切である。「日本モトショク」の理事を務める3名は、高校時代から50年以上の付き合いのある友でもある。人生設計や想いを共にできる仲間がいることが、活動継続の支えになっている。

これからの展望

蕎麦づくりにおいては、現在、加工業者に委託している製粉作業の内製化を目指している。また、中四国エリアには大麦を用いた菓子を手がける企業が少ない。大麦を使ったシフォンケーキの開発・販売を進め、アレルギーでケーキが食べられない子どもたちに届けたい。その製造・販売、蕎麦店の経営を安定させ、耕作放棄地を再生できるプロジェクトとして確立したい。

体制図

就労支援施設と教育施設が「NPO法人 日本モトショク」と連携し、利用者へ商品サービスを料金と引き換えに提供し、岡山市は補助金を「NPO法人 日本モトショク」に提供するという体制図

2019年の取材の内容です。