
のっぷ:文化芸術鑑賞や体験活動を通して、子どもと大人が共に育ちあう地域づくりに取り組むNPO法人があるんだ。今年で任意団体としての設立から40周年を迎えた「NPO法人みんなの劇場・おかやま」だよ。代表理事の髙谷純さん、副代表理事の太田顕子さん、同じく副代表理事の妹尾実佐子さんの3人に活動についてお話をうかがいました。

(左から)妹尾副代表理事、髙谷代表理事、太田副代表理事
のっぷ:はじめまして。つながる協働ひろばののっぷです!
「みんなの劇場・おかやま」は1985年、地域の母親たちが中心となり任意団体「西大寺子ども劇場」として設立されました。それから活動を重ね、子どもと大人を結ぶ〝地域の小さな文化拠点″に成長。2001年にはNPO法人化し、メンバーも多世代、多地域にわたるようになり、2016年から現在の「みんなの劇場・おかやま」に名称が変わりました。今年で設立40周年を迎えましたが、どんな活動に取り組んでいるのですか?
髙谷代表理事:「活動エリアは岡山市東区と瀬戸内市が中心で、子どもたちの文化芸術鑑賞や体験活動などに取り組んでいます。メインの活動である演劇やコンサートなどの鑑賞会は、プロのアーティストを呼んで年5回開いています。
そのほか、自分たちで企画してキャンプ、芋掘り、餅つきなど、さまざまな体験活動も行っています。各地にある子ども劇場や親子劇場という組織は元々、福岡県で始まって全国に広がっていきました。1969年、岡山市に「子ども劇場」が誕生し、活動の輪が次第に広がる中、東区にも拠点をつくろうと「西大寺子ども劇場」を設立したのが始まりです。当初は子どもたちを中心に親子で活動を始め、次第に不登校や障がいのある子を持つ親子、更には子どもの有無に関わらず誰もが関わり、『西大寺子ども劇場』から『みんなの劇場・おかやま』に名称を変えて現在に至っています。」
太田副代表理事:「活動の中には、岡山市子どもセンターや西大寺公民館と一緒に取り組む事業もありますし、瀬戸内市では瀬戸内市民図書館との協働提案事業も行っています。」
のっぷ:現在は何人が参加しているのですか?
髙谷代表理事:「会員は約150人です。多くは家族ぐるみで入会してもらっていますが、最近は大人だけでも会員になっています。」

「みんなの劇場・おかやま」のロゴマーク(提供:みんなの劇場・おかやま)
のっぷ:幼少期からプロの劇団による文化芸術に触れることや、自然の中でさまざまな体験や経験を重ねることは子どもたちの成長にも良い影響を与えそうですね。こうした活動の中で、大切にしていることはどんなことですか?
太田副代表理事:「文化芸術を鑑賞して、自由な創造力を育んでもらいたいと思っています。体験活動でもルールを決めず、自分で考えて行動する自主性を大切に、いろいろな発見をしてもらいたいです。ルールを決めてあれをやりなさい、これをやりなさいとは言わないですし、やりたくないと言って参加しない人がいたとしても、それに対して注意したりはしません。これまで発達障がいや不登校の子ども達も活動に加わってくれていますが、どんな人でも参加しやすい雰囲気づくりを大切にしています。」



体験活動(芋掘り)の様子
髙谷代表理事:「もともと母親が会員で、私も子どものころからずっと劇場の活動をしています。私は、子どもたち自身が企画してキャンプをする活動のリーダーとして取り組んできました。代表理事に就いたのは前代表理事の急逝がきっかけです。『代表をやってもらえないか』と声をかけていただいたので、幼いころからお世話になっていた法人の活動を継続させたいと思い、引き受けました。」
太田副代表理事:「私は、子どもと一緒に鑑賞会に行ったことがきっかけです。子育てをしていると大変なことも多いのですが、活動に参加して子育ての悩みや困りごとを皆に相談して乗り越えることができました。学校でもなく、地域でもない団体という点がよかったと思います。」
妹尾副代表理事:「私は近所の人に勧められて、子どもが4歳の時に初めて鑑賞会に行きました。そうしたら子どもよりも私の方が先に劇場の活動にのめり込んでしまいました。相談ができるのはもちろんですが、人生の先輩たちからいろいろなアドバイスをもらえることが子育ての助けになりました。私の子どもが卒業した後も継続して活動に携わっています。」
のっぷ:みんなの劇場・おかやまのメイン活動である鑑賞会はこれまで何回行っているのですか?
髙谷代表理事:「設立から今まで約340回の鑑賞会を開催して、延べ10万人以上の人たちが参加しています。」
妹尾副代表理事:「鑑賞会は、演劇や人形劇、音楽のほか、マジックやパントマイムといったパフォーマンスなどさまざまなものがあります。2026年5月31日には設立40周年の記念鑑賞会、人形劇団クラルテ『11ぴきのねこ』を西大寺百花プラザ(岡山市東区西大寺南)で開催します。」
2025年7月に開催された鑑賞会の様子(写真提供:みんなの劇場・おかやま)
のっぷ:芸術鑑賞や体験活動からスタートしたみんなの劇場・おかやまの活動ですが、時代の変化と共に取り組む内容に変化が生じていると思います。最近は子育て支援にも力を入れているのですよね?
太田副代表理事:「2010年から『子育て応援カンガルーポー』という活動を行っています。カンガルーポーは、発達障がいや困りごとを抱える保護者の学習交流広場として始めました。発達障がい等に関する専門的な知識を学んだり、同じような子どもがいる母親たちからアドバイスをもらうなど、子育てに関する情報交換をしています。『うちの子は周りの子と少し違うけど、障がいがあるのかな?』と不安を感じたら、一人で悩まず、カンガルーポーに参加してもらいたいと思います。
『子育て応援カンガルーポー』は毎月開いており、岡山市立上道公民館では第2月曜日、瀬戸内市土師交流サロンでは第2金曜日の午前10時から正午まで開催しています。
また2021年には、不登校の子どもの未来を応援しようと『RASISA~あなたらしさ~』という交流広場を始めました。学校に行くことにこだわらず、自分らしい生き方を探していくことをテーマに活動をしています。」
のっぷ:芸術鑑賞などを生かしてさまざまな子育て支援にも活動の幅を広げている「みんなの劇場・おかやま」。参加した人たちにはどのようなことを感じてほしいですか?
太田副代表理事: 「『情緒を育む』とか『創造力を育む』といったことはよく知られていますが、最近はただ同じ空間で劇を見て楽しんだり、悲しんだり、同じ時間を共有して笑いあえる喜びを感じてほしいという思いが強くなっています。2020年に新型コロナウイルスが流行してからは、コロナの前は当たり前だった同じ空間で笑いあうことができなくなりました。コロナ収束後に、また芸術鑑賞会が再開されるようになると『皆で笑いあえる瞬間がすごくうれしい』という感想をたくさんいただきました。同じ空間や時間を共有すれば人間を信じることができるし、国籍や障がいの有無は関係ないんだと思えるようになるはずです。まずは一度、鑑賞会に来てもらって同じ空間を楽しんでほしいです。」
のっぷ:40年の歴史の中で活動の幅を広げながら、さまざまな人の生活の支えになっていますね。「みんなの劇場・おかやま」で幼少期を過ごした人の中には、鑑賞会で劇や音楽に触れたことをきっかけに、劇団員になった人や音楽家、指揮者として活動している人もいるそうですね。さまざまな人の未来につながる活動を繰り広げる「みんなの劇場・おかやま」。最後に今後の目標をお願いします。
髙谷代表理事:「趣味が多様化する中でも、演劇や音楽といった『生』の芸術を体験することはとても大切だと考えています。今後も、子どもを中心に大人も一緒に体験できる空間をつくり続けていきたいですし、皆が居心地の良いコミュニティーにしていきたいと思います。」
太田副代表理事:「多様性と多文化共生をテーマに活動をしていきたいと思っています。昔からさまざまな文化があって、地域にもいろいろな国の人たちが暮らしています。それぞれの文化を知ることで理解を深め、皆で共生社会をつくっていく取り組みに力を入れたいと思っています。」
妹尾副代表理事:「『みんなの劇場・おかやま』というコミュニティーはとても居心地がいいんです。私は子どもと一緒に参加するようになったので大人になってから関わっていますが、自分も成長させてもらったし、子どもも周りの皆さんに育ててもらったと思っています。できるだけこの居場所を守って続けていきたいですね。『見たことがある』『行ったことがある』というのは、揺るぎない心の自信になることを自分の子どもの成長を通して感じました。生の芝居を見ていろいろと感じ、体験活動でさまざまな経験を重ねて、大人になっていってほしいなと思います。」


みんなの劇場・おかやま
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ありがとうございました。
次はどちらの法人におじゃましようかなぁ。