現代の中学生は、他者とのつながりや関わりの不足、様々な価値観・職業観に触れ自分の考えを人に伝える機会の少なさ、自己肯定感が低く夢や目標を持ちにくい生徒の存在などの状況がある。
今後、地域課題はますます複雑化し、解決が困難になるなかで、課題を解決し地域を支え、創っていける人材を育てるためには、若者が様々な年代の人と関わりを持つ機会が確保されていくことが必要であると考える。
若者が魅力的な大人と触れ合う機会を地域の文化として形成していくことに取り組み、中学生が自分の親や先生以外の地域の魅力的な大人と出会い交流する場「だっぴ」を設ける。
取り組み方として、地域の大学生が関わり、サポートすることで、中学生にとって身近な将来の姿を意識すると共に、大学生自身の地域貢献意識を高めるなど、双方の自己肯定感を高めるようにする。
平成27年度市民協働推進モデル事業の実施で、「だっぴ」がキャリア教育活動の1つとして有効であることが分かった。昨年度行われた平成28年度市民協働推進モデル事業では、「だっぴ」の実施学校が増え参加者からは高い評価を得ているものの、実施学校によっては地域の大人への参加依頼や当日運営などの負担が大きくなっていることが明らかになった。
そのため、今年度はより多くの市内中学校での開催が可能になる仕組みを整えるべく、運営のマニュアル作りや担い手育成に時間をかけて取り組む。
中学生と大人・大学生が語り合う場のコーディネート
市内中学校への情報発信
2017年11月29日(水曜日)に岡山市立建部中学校で実施された「中学生だっぴ」の現場におじゃましました!
「だっぴ」は「地域で主体的に行動する大人」と「自分のあり方を模索している若者」が働き方や生き方に関するテーマについて自由に話し合うことのできるプログラム。過去2年間にわたってNPO法人だっぴと岡山市教育委員会が協働して、中学生のキャリア教育プログラムとして実施しました。
体育館でだっぴ
中学生、大学生、大人が一定数ずつグループに分かれて小さな輪になり、示されたテーマについて自分の思いを書いたスケッチブックを見せながら話し合いが進められました。「自分でお店を開くとしたらどんなお店?」といった気軽なテーマから「勉強する意味ってなに?」などの深いテーマに移っていくにつれて、全員が笑顔から真剣な表情に変わっていくのがとても印象的でした。
最後には中学生から「大人ってすごいんだなと思った」「他人と違ってもいいんだなと自信が持てた」などの感想が聞かれ、他者への敬意や自己肯定感が育まれていることがわかりました。
建部中学校で実施された「だっぴ」は過去に実施されたものと違って、建部公民館や地域のボランティアグループなどで構成された実行委員会が企画や参加者の調整を担いました。その結果、地域内外の様々な経験や価値観を持った大人の皆様にご参加いただくことができ、子どもたちに「身近な大人以外の大人」の話を聞いてもらいたいという建部中学校の先生方の願いがかなったキャスティングが実現しました。また、公民館が大人の皆さんと連絡・調整を担ったことで、中学校の負担も軽減されたそうです。
最後は参加者みんなで記念撮影
今回の「だっぴ」を見て、参加者や実行委員会など、関わる大人の多様さが「キャリア教育」としての深みや広がりにつながっていると感じました。子どもと大人がきちんと向き合ってお互いを理解し合うことが、ふるさとに対する思いを深めたり、世の中のことについて考えたりするきっかけになっていくんだね!
3年間のモデル事業を通じて、岡山市内の全38校中5つの中学校で「中学生だっぴ」を実践することができました。アンケート結果のまとめなどから、だっぴの意義や効果に対する理解は着実に広がっており、これからの社会変化に適応可能なキャリア教育プログラムとしてさらにニーズが高まることも想定されます。
資金と人材の問題に解決策を見いだすことができず、一般施策化は一時的に断念することとなりましたが、3年間の協働事業を通じて得られたノウハウをコンパクトにまとめたマニュアルが完成しました。地域住民組織やPTAなどがだっぴを主催することを想定しているため、様々な主体にマニュアルが活用され、市内全域でだっぴが開催されることが期待されます。