令和3年2月13日(土曜日)に建部町文化センター小ホールにて、約60名の参加のもと、令和2年度地域活動リーダー養成講座「「郷土愛」による持続可能な地域づくり」を開催しました。
郷土愛を生かした地域づくりについて学ぶとともに、地域への強い愛着と誇りを持ったリーダーから、地域に対する想いや活動で工夫していることなどをお話いただきました。
岩淵さんからはじめに「地域のアイデンティティ」に関するお話がありました。
現代社会では個人と地域を結び付ける「核」が減っており、核がないことで住民同士の対話がなくなり、住民が地域に所属しているという実感=地域のアイデンティティを獲得しづらい状況になっているそうです。
岩淵さんは「核」を「まちの宝物」と言い換えて、学生たちと「まちの宝物」を探す授業を実施されています。
まちには人それぞれの宝物が必ず存在しており、それに気づくことが地域のアイデンティティを育てる第一歩になること、また、宝物に対する愛着や誇りが「郷土愛」であり、まちづくりに欠かせない要素になるとお話しいただきました。
最後に参加者に向けて
「郷土愛をまちづくりに活かす方法は一つではない。皆さんは郷土愛を持って活動に関わっているはずなので、自分たちがどのような動機・経緯でまちづくりに関わり始めたかを振り返って、まちづくりへの活かし方を確認してほしい。
また、その経験を多くの人に伝え、郷土愛を持った人を増やしてほしい。」とメッセージを送られました。
前田さんからは熊本県天草市湯島(以下、湯島)で実施されているまちづくりの事例をもとに郷土愛を持ったリーダー育成の方法をご紹介いただきました。
「田園将に蕪れんとす胡ぞ帰らざる」という故事を引用して、故郷を思う感情が誰もが普遍的に持っているものであること、また、進学や就職を機に故郷を離れることが一般的になっている現在、人生の転機で「故郷へ帰る」という選択をしてもらえるか否かが地域の持続可能性に影響してくるというお話がありました。
また、具体的な事例を交えて、幼少期から学生時代までの間に体験活動やフィールドワークを通じて地域に対する学びを深めることが、地域活動への参加(リーダーの育成)につながることをご紹介いただきました。
前田さん自身が湯島で撮影された写真等をもとに、
地域への愛着は特別な経験からではなく何気ない日常・原風景から喚起されるものであり、生身での体験(五感で感じること)が愛着を形成するというエピソードをもって事例紹介が結ばれました。
2012年に地域おこし協力隊として瀬戸内市に移住後、移住者の受け入れや、交流拠点・空家整備・農地などの整備に関わる。
現在は瀬戸内市移住交流促進協議会の会長も務めている。
造山古墳蘇生会の発足と同時に会長へ就任。
これまでにガイドマップ作成、ボランティア養成講座、清掃活動などを実施して造山古墳の日本遺産認定を後押しした。
平成20年から現在まで加茂学区連合町内会会長も兼任する。
吉備中央町大和地区にて「グラウンドゴルフ」「健康のつどい」などの福祉向上の取組のほか、「魚つかみ」「とんどまつり」など、多世代交流を通じた住民同士のつながりづくりに力を入れている。
たけべおこしプロジェクトにて、たけべマルシェ企画や地域紹介冊子「たけべぐらし」の発刊などを行う。
大人と中学生のトークイベント「たけべ中学生だっぴ」や、空き家問題解決にも取り組んでいる。
岩淵泰さん・前田芳男さん
講師の岩淵さんと前田さんをコーディネーターに迎え、パネリスト4名とともに「郷土愛」を持った人材の発掘と育成について考えるパネルディスカッションを行いました。
はじめに今回のテーマである「郷土愛」について各パネリストの率直な印象が述べられた後、それぞれの考え方や経験をもとに自由な協議が行われました。
移住支援に携わる菊地さんからは
「移住者はできるだけ早く移住先へ愛着を持ちたいと思っている。地域のリーダーやコーディネーターが生活を支えるだけでなく、地域の良さを教えてあげる必要がある」との問題提起がありました。
これを受けて地域住民の一体感の醸成に力を入れている難波さんから
「私たちのまちには自慢できるものがたくさんある。移住希望者だけでなく、移住者に対しても自信を持って地域の魅力を発信していきたい。」との回答がありました。
また、定廣さんからは
「誰もが郷土愛を持っている。眠っているだけで刺激をすれば火が付く。」との意見とともに自身がはじめて開催したイベントに予想を大きく超える住民の参加があり、地域の底力を実感したというエピソードが紹介されました。
続いて、平田さんから
「自分たちの地域を自分たちが守るのは当たり前だと思っている。特に地元事業者は早くからその意識を持っているので積極的に巻き込むべき。」とのお話がありました。
定廣さんと平田さんの意見から
「地域のリーダーの役割は郷土愛を育てることではなく、郷土愛を発揮できる機会を提供することである」とのまとめが行われ、パネルディスカッションを終了しました。
休憩をはさみ、最後は各登壇者から用意されたクイズを一題ずつ出題していただき、参加者から挙手制でお答えいただきました。
正解者には、登壇者が用意された記念品が贈呈されました。
平田さんからの出題は「様々な活動を通して一番重要視していることは?」でした。
答えは「町内会の理解を得ること」という事で、会場のみなさんも納得されていました。
定廣さんから出題された「造山古墳蘇生会の活動発足のきっかけ」が「地元公民館始まって以来の参加者を集めた考古学講演会」という解答で、地域の人は地元に無関心ではなく何か事があれば集まる可能性があることを示してくださいました。
パネリストの皆さんは、それぞれの場所で「楽しんでやっていく。自分達が地域を楽しくする。」という気持ちを強く持たれています。
郷土愛にあふれるリーダーたちのその気持ちが、地域でのそれぞれの活動をより活発なものにしていることを学びました。
幼い頃から積み重ねた、何気ない日常の生身の体験により育まれる郷土愛を、次世代にも伝えていくことで持続可能な地域がつくられていくことが感じられた講演会でした。