ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

おかやまESDフォーラム2023

[2023年12月26日]

ID:55563

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

2023年11月23日(木曜日・祝日)に「おかやまESDフォーラム2023」が岡山国際交流センターで開催されました。
第1部では、国内外の優れた取組を顕彰する「ESD岡山アワード2023」の表彰式と受賞団体によるプレゼンテーション、第2部では、ESD・SDGsに取り組む中高生・公民館の取組発表と意見交換が行われました。

第1部 ESD岡山アワード2023表彰式

今年で9回目を迎えた「ESD岡山アワード」は、国内外で行われるESDに関する活動の充実とESDの普及への貢献を目的に毎年開催されています。今回は、世界56ヵ国から108件もの応募がありました。厳正な審査を経て、スペイン王国、チュニジア共和国の2つの取組が受賞事業に選ばれました。

受賞事業の概要は下記URLからご覧ください。
https://www.city.okayama.jp/sdgs-esd/0000054094.html

フォーラムの様子1

受賞団体の代表者が参加した表彰式では、岡山市の大森雅夫市長、ESD岡山アワード運営委員会の阿部宏史委員長から表彰状が授与され、賞金の目録が贈呈されました。

大森市長は祝辞の中で、「受賞事業は地域特性を踏まえた優れたESDの活動で、今後ともこうした未来に残すべき取組をきちんと伝えていきたい。岡山市ではESDの世界会議以降、本アワードを継続してきたが、SDGsを知っている子どもの増加など、地球を大切にしようと取り組んできた活動が実を結んできたことを実感した」などと述べられました。

また、阿部委員長による講評では、「学校を中心に活動を進めるスペインの取組は、岡山ESDプロジェクトと共通するところもあり参考になる。チュニジアの取組は環境保護と教育という明確な目的があり、さらには貧困層のエンパワメントや雇用などに踏み込んでいる。地域コミュニティへの波及効果も生まれており、更なる取組拡大に期待したい。2つの取組は先進国と途上国、取組の規模などの点で対照的ではあるものの、どちらも中核は教育であり、様々な自治体で参考になる活動」などと話されました。

表彰の様子
表彰の様子2



第1部 受賞事業のプレゼンテーション

マイクロ・ネットワークス(スペイン王国)

バルセロナ市議会による「より持続可能な学校ネットワーク」(スペイン王国)から、受賞事業「マイクロ・ネットワークス」についてプレゼンテーションが行われました。
バルセロナ市議会は2001年、学校を変革の担い手とするため「より持続可能な学校ネットワーク」を設立。2011年から小規模なグループに分かれて活動する「マイクロ・ネットワークス」事業が始動し、バルセロナ全域に広がっています。自治体の計画に沿った持続可能性に関する様々な環境問題に取り組み、教育コミュニティ全体の協力を得ながら課題解決に向けたプロジェクトを行っています。

参加者からの「日本での同様のプログラムの場合、プログラム参加校であっても担当教員によって熱意や取組に差が生じているが何か良い手立てはないか」という質問に対しては、「実務を効率よく進めるための教材を教員に提供するなど、参加を後押しする対策をしている。モチベーションを保つために、自分が良いことをしていると実感できることが大切」と回答されました。
プレゼンの様子1
プレゼンの様子2



グリーン・スクール(チュニジア共和国)

次に、ワラ・ウィ・キャン(チュニジア共和国)から、受賞事業「グリーン・スクール」についてプレゼンテーションが行われました。
チュニジアの恵まれない地域で、継続的・包括的かつ持続可能な社会・経済成長を目的に設立された非営利団体ワラ・ウィ・キャンは、2016年に「グリーン・スクール」事業を開始しました。寄宿学校を拠点に、再生可能エネルギーの利用と持続可能な農業の実践により、貧困地域の労働層や家族の自立を助け、女性や若者をエンパワーすることに焦点を当てた取組です。

参加者から、生徒が主体性を発揮している具体的な場面について質問があり、「生徒のニーズは生徒自身がわかっているものなので、毎年ニーズを尋ねて発言してもらっている。しかし、恵まれない地域の子どもたちは、そもそも自身のニーズを把握できていないことも多く、専門家が教育をしている」といった回答がありました。
プレゼンの様子3
プレゼンの様子4


プレゼンテーションの様子はYouTubeで公開しています。下記URLからご覧ください。



2つの受賞事業は「私たちでなければ誰がするのか、今しなければいつするのか」という思いを根底に取り組まれていたよ!気候変動や食料・エネルギーの危機が叫ばれる世界で、問題の解決に向けて、みんなで取り組み続けていくことの大切さを改めて感じたんだ。

第2部 中高生による取組発表

高島公民館「高島地域づくり隊」/高島を笑顔にする英雄(ヒーロー)たち

高島地域づくり隊は、高島公民館を中心に活動する地元の中高生によるグループです。「高島の人々を笑顔にする+自分たちも笑顔になる」をスローガンに、中学生36人、高校生7人、大人11人で活動しています。高島の地域住民から感謝の言葉をもらうこと、活動を通して自分たちが「またやりたい」と思うことを活動のゴールに設定し、取り組んでいます。
「高島人生き方辞典」は、メンバーの母校である高島小学校からの依頼で作成されたものです。世の中にはいろいろな仕事があること、夢はどんなものでも誰でも持てることを伝えるために、高島地域の大人たちにインタビューと撮影を行い、映像教材として寄贈したとのことです。
「高島キッズ夏祭り」では、かき氷の屋台とお化け屋敷を準備・運営しました。かき氷は用意した200食が完売、お化け屋敷も200人が来場したそうです。

このほかにも、高島小学校で開催したウォーターガンバトルなどの活動の様子が笑いも交えながら楽しく笑顔で発表されました。

岡山ESD推進協議会の池田運営委員長は、「ゴールが明確になっているのが良いと思う。中高生が中心となって元気に頑張っているから大人も協力する。いい循環ができていると感じた」と講評されました。
高島地域づくり隊プレゼン


岡山県立邑久高等学校/瀬戸内市SDGsカードゲームwith邑久高生

邑久高校からは、地域探究活動を通じて瀬戸内市と協働で制作した、瀬戸内市オリジナルSDGsカードゲームについて発表がありました。
瀬戸内市職員から市の課題を聞き取り、その解決方法について考えました。大学教授による講演会では、解決策によって新たに生じる問題について考え、トレードオフカードとしてカードゲームにも反映させました。また、課題解決のために必要な技術や道具が書かれたリソースカードには、瀬戸内市独自の要素として市の自然や文化財を加え、瀬戸内市オリジナルのSDGsカードゲームを完成させました。
このカードゲームを使って瀬戸内市内の小学校で高校生が出前授業を行ったほか、おかやまSDGsフェアに瀬戸内市と共同出展し、他校の高校生にもSDGsカードゲームを体験してもらいました。また、大学生や会社員、福祉施設の利用者を対象にカードゲームを紹介したこともあるそうです。

池田運営委員長は講評で、「自治体と協働することで、地域が本当に抱えている課題を知ることができる。トレードオフにまで踏み込んでいる点が効果的だと感じます。ほかの地域にも広がることで、より実効性の高い取組になると思う」と述べられました。

邑久高校プレゼン


岡山県立新見高等学校/みんなの育児

新見高校の地域探究活動では、地域課題として、働く女性の家事負担と児童虐待を取り上げました。この活動を通して考えた課題の解決策を、新見市議会に陳情することを目標にして活動を続けています。
まず課題として、子育てが大変な時期は新生児期と2~3歳とのアンケート結果に対して、新見市の子育て支援制度は主に1歳未満が対象であること、男性の家事育児に携わる時間が女性より5時間以上少ないこと、子育て中の親子交流等を行う施設「にこたん」の利用者がほぼ女性であることが紹介されました。
ニーズ把握のために実施したアンケートでは、家事分担の78%が女性であることや、「家事を手伝ってほしい」との回答が67%で、その内容として掃除・洗濯・料理があげられたことが説明されました。この結果から、社会福祉協議会による家事支援や、父親に参加してもらいやすい活動として「にこたん」の日曜開催が提案されました。

池田運営委員長からは「情報収集と分析がしっかりとできている。具体的に数値で示すことで説得力が生まれ、漠然とした問題ではなく、明確な課題として共感できる。議会に陳情する際も理解を得られ、実行に向かっていくのではないかと思う」と講評がありました。
新見高校プレゼン


倉敷市立玉島高等学校/誰も置き去りにしない学校教育を

玉島高校は今年、ロス食材を加工して缶詰をつくる「一般社団法人コノヒトカン」主催の「コノヒトカン1000缶プロジェクト」で「岡山市SDGs・ESD賞」を受賞し、コノヒトカン200缶を獲得しました。これを機に、不登校生徒の増加という地域課題の解決のため、コノヒトカンを活用した様々なイベントを企画しています。不登校を経験したメンバーもいることから、「イベントで様々な人と交流して自分は一人じゃないと感じてほしい」と取組を進めています。
閉じこもっている人が外に出るきっかけになればと企画されたコノヒトカンと不用品の交換会には、子ども15名と大勢の大人が参加しました。ほかにも創作を通じた交流の機会として、コノヒトカンの空き缶でアートを作るイベント開催など、地域の子どものための取組が進められています。今後も地域の食堂での食事会が計画されており、くらしき作陽大学とのレシピ開発、玉島商業高校への当日参加の呼びかけなど、学校間連携も進んでいます。

池田運営委員長は「不登校の問題は地域の中で置き去りにされてきた人全体の問題。自身の経験も踏まえながら外に出るためのアイデアを出している点が良い。人の輪を使って、優しい心を持った人を地域に増やしていくために今後も頑張ってほしい」と講評されました。

玉島高校プレゼン


応援メッセージ写真

各取組への応援メッセージ

第2部 意見交換

第2部の後半は、登壇者と参加者が混ざったグループで意見交換を行いました。「若者の社会参画」をテーマに、意識づくり・情報発信、参加機会の充実、参加の後押しの3つの項目について意見交換しました。グループは様々な世代や組織の参加者で構成され、世代間での活発な意見交換が行われました。

交流会の様子1
交流会の様子2


意識づくり・情報発信については、多くのグループから「SNSの活用」「家族や友人など親しい人からの働きかけ」といった発言がありました。また、高校生からは「チラシや手紙は思いを伝えることができる。SNSは情報を得やすいメリットがある」と自分たちの取組から得た発見をもとにした意見が出されました。

参加機会の充実については、「学校単位でボランティア活動をする」「若者が公民館で高齢者にスマホ教室を開催する」といった学校や公民館による参加機会の提供や、「お祭りなど楽しいイベントを開催する」などのアイデアが発表されました。

参加の後押しについては、「動画編集や音楽などの好きなこと、得意なことだと行きたくなる」「ボランティア活動に参加するまでのハードルが高いと感じている若者は多いので、参加した人が周りに広めていく」といった若い世代の目線からの発言や、「活動するのに必要なものをそろえる」といった実行性を重視した提案もなされました。
交流会の様子3
交流会の様子4

第2部の意見交換に参加した「ESD岡山アワード2023」の受賞者からは、「海外の人と共有する機会も大切。学校間で協力・交流ができたら良い」「今回、世代間・文化間を超えた交流ができたと思う」とのコメントがありました。

最後に、阿部会長から「様々な人と話をすることができた示唆に富むフォーラムだった。ESD岡山アワード受賞事業と中高生の取組発表を聞いて、人・地域への思いやりと愛情が大切だと改めて気づいた。今日得た知識を次に向けていかしていってほしい」と閉会挨拶がありました。


今回のおかやまESDフォーラムは、多世代の人が参加して、みんな対等に意見交換ができていたよ。発表に対する質問やコメントも、あたたかさを感じるものだったんだ。こういう優しい気持ちが、地域の課題を一つずつ解決して持続可能な社会にしていくうえで大切だね!