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第2回 地域の未来づくり推進事業補助金を活用した、地域活性化ビジネスのリアル

[2026年7月27日]

ID:85043

御津五城「里山集落発」を商品の付加価値に!食のバリアフリーを叶える新ジャンルスイーツ

株式会社FLC design 飲食事業責任者 仲田 早苗氏

株式会社FLC design 飲食部門責任者 仲田 早苗氏の写真

東京から御津へ移転し地域活性化ビジネス始動

株式会社FLC designの写真

東京から岡山市北区御津新庄545へ移転してきたIT企業で、地域の魅力を発信する食品関連の新事業を担当しています。事務所に隣接する旧戸川邸の母屋を拠点に、地元農産物を使ったアレルゲンフリースイーツを展開し、海外にも事業を広げようとしているところです。
FLC designは、夫で代表取締役の中里真一が、ゲームプログラマー時代の同僚で現在東京支社を担当する取締役と立ち上げた会社です。岡山への移転は、東日本大震災をきっかけにデジタル事業に欠かせない電気が災害で喪失することへの危機感を持ったこと、企業の業務効率改善を請け負う中でリモートワークに取り組める状態だったことが要因でした。そしてたどり着いたのが今の場所です。2棟確保でき、空港が近く東京へのアクセスが良いなど建物や立地の条件に恵まれた場所だと感じたことが、ここを選ぶきっかけになりました。

御津新庄を含む五城という地域は、豊かな土壌を誇る場所。ここで育ったコメは品質が良く、高瀬舟で岡山城下まで運んでいた時代も高値が付いたと言われる産地です。母屋は地域の庄屋を歴任してきた立派なお宅で、外来者の逗留を任され、それを地域で支えるというような場所でもありました。

地域の「人」との絆から課題知り事業構築を決意

2018年に移転してきた時には、事務所以外の活用は考えていませんでした。土地建物を購入した2017年から東京と行き来しながら準備を進めた1年間に地域の皆さんと交流を深め、さらに高齢化のため存続が危ぶまれた地域有志運営の直売所「青空市場五城村」の運営を支援したことで地域との関係はより深まっていきました。そうした交流の中で地域の課題を聞き、自分事として自覚したことがコミュニティービジネスにつながります。

地域の課題とは高齢化と若者離れによる担い手不足。その対策としてまず挙がるのが移住者の募集ですが、認知機会の不足をどうにかしなければなりません。また問題を垣根なくシェアする機会・仕組みが乏しいことにも課題を感じていました。外から入ってきた者だからこそできることを考えた時に、旧戸川邸を活性化の拠点にして人を呼び込むことで移住誘致につなげることができるのではないかと考案したのが、「五城『縁を紡ぐ家』再生事業『えんつむプロジェクト』」です。立ち上げに当たり岡山市の地域の未来づくり推進事業の補助事業に申請し、事業計画をまとめ、2019年に認可を得ました。

目指すのは地域の活性拠点。補修に着手するため「旧戸川邸が新しく生まれ変わるので、みなさん良かったら見に来てください」という「見納めオープンハウス」や、解体ワークショップなどを開き、着工後も再生作業のワークショップを度々開くなど、かかわってもらうことで皆さんにとって思い入れのある拠点作りに取り組みました。そして2020年11月にオープンしたのが「omoや545」です。菓子工房と直販ショップ、カフェ、一組限定の宿泊施設を備えています。

ニーズをとらえ試行しグルテンフリースイーツと御津を世界へ

事業計画は、特産品を開発し魅力を発信するとともに、イベントなどで交流活性を進め、宿泊による滞在でより地域のことを知ってもらい、住民との交流も深めてもらうことで移住を促すというものです。特にコアコンピタンス(事業の核)としたのが特産品開発。地域の魅力を五城のコメに乗せ外に発信し、この地へ集客していこうというものでした。

株式会社FLC designのカフェの写真
グルテンフリーのドーナッツの写真

着目したのがグルテンフリーの米粉加工食品。しかし競合が多いことから差別化のため、アレルゲンフリーのスイーツをコンセプトとしました。岡山市内の幼稚園で、誕生日祝いのためにアレルギーの有無にかかわらず一緒に食べられるケーキを作ってもらおうと思っても、手を挙げたところが一社もなかったという話を知ったことも大きなきっかけです。当時再生工事の最中だったことから、今ならアレルゲンを持ち込まない工房を実現できると気づき、幼稚園とアレルゲンフリーの生地を開発しました。

この生地を基に、地元食材を使ったカラフルで健康的なドーナツなどを展開しています。6年間取り組む中で、アレルギーはもちろん、文化、宗教などにかかわらず一緒に食べて美味しいと言い合える商品作りがコアになっていきました。当初一般消費者を対象に展開していましたが、相手の食制限の背景が分からなくても安心して贈れるギフトとして百貨店やさまざまな法人に顧客層が広がり、また食制限がある可能性が高いインバウンド客向けの都内のホテルに朝食商品を提供するなど、2023年から業務用が拡大しています。日本在住の外国人が日本の物を海外に勧めるアワード「おもてなしセレクション」で、ドーナツセットが2024年から3年連続受賞し、ガトーショコラも受賞しました。

そして国外にも需要があると気づき、アレルギーに限らない「食のユニバーサルデザイン」をテーマにリブランディング。より幅広く食制限に対応していることを意味する「フリーフロム」をキーワードとし、新しいブランド「minaCorale(みなこらーれ)」を2月に立ち上げました。6月末には、東京ビッグサイトで開催された食品輸出関連の展示会に出展し、現在各国への輸出の商談を進めています。バイヤーに響くのは、商品の良さだけでなく、地域活性化に端を発した活動から生まれた商品というバックストーリーが付加価値になっているからです。

これまでの活動を振り返ると「観察・共感・洞察」で「問題定義」をし、それを「創造・視覚化」、「プロトタイプ」を作り、「テスト(評価と改良)」を経て、「試作・試行」して再び「観察・共感・洞察」するというサイクルを回してきました。これからもこれを繰り返していくと思います。

西大寺五福通りにおける「起業×まちづくり」

株式会社KKM川崎 代表取締役 川崎 一平氏

株式会社KKM川崎 代表取締役 川崎 一平氏の写真

西大寺ににぎわい取り戻すため人を呼び込む

五福カフェの外観写真

東区西大寺で飲食業とビールの製造をしています。十数年前に父が地元の銀行を定年退職した後にカレー店を始め、それを引き継ぎ、起業した会社です。事業目的を、わたしが住んでいる西大寺東地域にポジティブな変化を起こし、地域を活性化することとしました。
西大寺は西大寺観音院、会陽という大きな祭、レトロな店・建物が並ぶ五福通りがあり、良い街ではあるものの、空き店舗が増え、使われていない建物がどんどん取り壊される大きな問題を抱えています。この状況を変えるため、事業計画を作り、実現させていっているところです。経営方針は、(1)新たな地域資源を発掘して有効活用する、そして(2)地域の魅力を地域外に発信して来訪者を増やす、さらに(3)街の回遊性を向上させ地域外の方の滞在時間を延ばす、最後にまだ到達していませんが(4)地域ブランドを作り若者や移住者の関心を高める、です。


クラフトビールが6本写っている写真

まず2021年に五福通りの古い倉庫を使い五福カフェをオープンし、翌年に醸造設備を設置して五福工房としてビールの製造も初めました。産学連携で岡山県立大学の田中晃一教授の協力を得て、西大寺観音院の木から採取した酵母で発酵させたクラフトビールを開発したり、OEM生産で放送局の周年記念ビールを製造するなど、地元西大寺を起点にした商品作りを進めています。イベントの主催もするようになりました。五福カフェについては、建物を改装する前に作った手描きのイメージ図があるんですが、そこに描かれた魅力的なランチの提供、麦酒工房、ピザ工房などをひとつづつ実現しているところです。月間では2500人弱の来客があり、そのうち2000人弱が地域外からの来客です。
そして五福カフェに続き、12月には西大寺観音院の門を出てすぐの観音院所有の建物にテイクアウトを備えた「お寺カフェ」をオープンする計画も動いています。歩いて20分程度の範囲内に、五福カフェ、五福工房の「楽しむ」、テイクアウトの「広める」、お寺カフェの歴史文化を「知る」という3つの要素がそろい、地域活性化の相乗効果につなげていきたいと考えています。

エンジニア時代に構築していた事業計画

わたしの取り組みの特徴は、事業計画に沿って実現していっている点です。わたしは大学卒業後に京都の電子部品メーカーに入社し、それと同時期に父が定年退職しカレー店を始めました。その後2021年に代表取締役を引き継ぐまで、20数年間電子部品のエンジニアとして働きました。そういった中で仕事に生かすために事業企画のトレーニングとして取り組み始めたのが西大寺の街づくりプランづくりです。そこで、現在につながる事業計画を構築しました。これを一つのプランとして、地域の未来づくり推進事業補助金も活用させてもらいながら正式に事業を引き継いで、現在に至るというのがわたしの経歴です。

引き継ぐきっかけはコロナ禍です。2019年に会社員として事業計画を作っていた時、コロナ禍が発生し、2023年に五類に移行するまで約4年間、通信機器に関連する企業は特需で休みもなく働いているような状態だったのに対し、実家では父親のカレー屋が営業自粛で時短営業を余儀なくされるという厳しい状況にあまりに大きなギャップを感じ。今思えば変な正義感が湧いて「地元のために何かできないか」と、早期退職、事業承継を決断しました。

「顧客目線」で「当たり前」をしっかりこなし、「目的意識」持つことが大事

振り返って大事だと思っているのが、体力、仲間つまり協力者づくり、そして事業方針を立てることです。仲間づくりについては、常に自分が動いて頑張っている姿を見せることが大切。これができていれば困ったときにアドバイスをくれたり、紹介してくれたりと助けてくれます。3つ目の事業方針については、前職での経験も含め特に重視しているところで、策定する上で3つの視点を重視しています。1つ目が顧客視点。自分本位になっていないか、自分が提供したいものでなく、客が求めているものが分かっているかです。2つ目は当たり前を当たり前に示せているかです。特別なことを考えるよりも、当たり前のことを毎日当り前にできているか、それが自分の行動に落とし込めているか、そしてしっかり事業方針に示すことができているかが重要です。3つ目は、目的志向であるかです。時間は限られているため、今日自分が何をやるのか、何のためにやるのか、目的意識を明確にすることが大切です。これをするだけで効率的に動け、自分がやっていることを周りに理解してもらいやすくなります。

起業し持続可能な事業を構築することとは、独自の技術と画期的なビジネスモデルを武器として新しい市場を切り開き、成長し続ける仕組みを作ることとされていますが、この3つの視点を自分の行動に落とし込めていれば、そこから独自の技術が生まれ、新しい商売にもつながるとものと感じています。

パネルディスカッション

株式会社FLC design 飲食事業責任者 仲田 早苗氏×株式会社KKM川崎 代表取締役 川崎 一平氏×岡山北商工会 支援2課長 津田 健治氏

津田:改めて地域での活動を始めたきっかけと想いの原点について教えてください。

仲田:きっかけは地域の課題を一住民として自覚したことだと思います。みんなでより楽しくこの地域で過ごしていくために、わたしたちに何ができるのかと考えた時にこのような事業の種を見付けた形です。

川崎:コロナ禍という世界的な出来事によって受ける影響の差を目の当たりにしたことをきっかけに考え始め、自分ができること、やるべきことがあると考えたことです。

津田:川崎さんが事業を動かし始めたときに先代とどんな議論がありましたか。

川崎:議論はありませんでした。父の飲食事業を横目に見ながら、工場の計画やライン作りをやりつつ2015年から4から5年間考え続けて作った事業計画があったので、人に言われてどうこうではなく、これをやれば実現できると動きました。

津田:仲田さんは、地域に溶け込むさまざまな取り組みに力を入れたようですが、移住を決めた時からこういったストーリーを描いていたのですか。

仲田:最初から考えていたわけではありません。ただ本業を通して大切さは分かっていました。本格移転から地域の未来づくり推進事業に応募するまでの1年程度の間に、プロジェクトを企画し、事業を立ち上げられたのは、地域の方たちとの関係性があったからこそだと思っています。その中では、キーマンが誰かなどをしっかり観察しながら次のアクションを考えるというようなことをやってきたように思います。

津田:壁となったことはありますか。

仲田:たくさんありましたが、特に資金繰りです。ハードの改修のために岡山市から地域の未来づくり推進事業の認定を受けましたが、すぐに補助金が入ってくるわけではありませんでした。認定を受け走り始めて初めて気付きましたが、1年ごとに経費精算があり、年度末に申請して初めてその後に入金されるため、最初自費で賄わなければならず苦労しました。事前に情報を得るために公的機関、経済団体の相談窓口をしっかり頼るべきだと思います。

川崎:まだ5年目で壁はありませんが、困ったことであれば毎月の資金繰り、パートのシフト調整などこまごまとしたものは毎日あります。ただ、その乗り越え方などは、事業計画があって、どのような店を作っていきたいか、お客様に何を提供するかを考えれば、答えというのは1つに絞られていくので、あまり苦労は感じていません。

津田:行政や支援機関の活用について教えてください。

川崎:支援の情報についてはネットですぐに入手できます。そういう情報をいかに取得するかを意識することがライブワークのようになっています。

仲田:最初はあまり頼ることを考えていませんでしたが、知ってみれば支援機関はびっくりするほどたくさんあり、早く気付けばよかったと思います。各種支援の申請についてプロの目で添削してもらうなど、特に商工会にサポートしてもらっています。頭に浮かんだところから伴走してもらえるということなので心強いです。

津田:最後に各パネラーから、参加者へ応援メッセージをお願いします。

仲田:事業をこれから起こすことを考えているなら、是非心にあるもの頭に描いているものを周りの人に伝えるところから始めてもらいたいと思います。そういった事業の計画は、いろんな人の目や耳に触れることでよりブラッシュアップされます。それを徐々に深めていって事業計画書というものができるようなイメージでトライしてみてはいかがでしょうか。

川崎:新しいアイデアを出そう出そうとするのではなく、方針、金、動いてくれる人をそろえることが大切です。あまり形にこだわらず、どういうふうにやっていくか、誰がやっていくかを考えれば動いていくものです。人数がそろえば、アイデアというものは出てきます。

参加者全員での記念撮影
仲田早苗氏と川崎一平氏とのツーショット写真