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第1回 20世帯40人の集落発、世界へ届けるマイクロエリアブランド・点々。平飼い養鶏から始まる資源循環と風景づくり

[2026年7月27日]

ID:83922

全国の動き・事例の紹介

山と本と株式会社 代表取締役 山本 雄生氏

山と本と株式会社 代表取締役 山本 雄生氏の写真

東京・八重洲に地域の人が利用できるフリーラウンジ

ポットラック ヤエスの写真

新卒で広告代理店に入社後、2016年から「NewsPicks(ニューズピックス)」へ参画し、広告事業や企業変革事業の立ち上げなどに従事しました。今では会員ユーザー数1000万人超の国内最大級の経済メディアとなっています。2025年に起業し、東京ミッドタウン八重洲5階を拠点とした地域経済創発プロジェクト「POTLUCK YAESU(ポットラック ヤエス)」のプロデューサーやNewsPicksのビジネスプロデューサーをしつつ、観光と一次産業の支援につながる事業化に取り組んでいます。

POTLUCK YAESUは、地域経済におけるイノベーションエコシステムの実現を目指し、さまざまな人が交わるように場やイベント、メディアなどを組み合わせたプロジェクトとして2023年3月にスタートしました。オープンラウンジのコンセプトについては、岡山県の西粟倉村など全国5、6カ所を視察して、東京にどのようなものがあればいいかリサーチしたところ、地域で交流する場合は馴染みの店や自宅に招待してくれることもあるが、東京にはゆっくり過ごせる場所がないことから、地域の人が上京した際に使える友人宅くらい気兼ねなくくつろげるスポットを目指したものです。会員制度も設けず、気軽に利用いただけます。ここに来ることで全国から来た地域の人が知り合うなど、出会いの場として新たなイノベーションが生まれることも期待しています。

個人の活動では来年、中小企業の経営層に向けた地域の実践知を共に学ぶツアーを行う「ビジネスツーリズム」を立ち上げる予定です。地域の現場でフィールドツアーやシンポジウムを開き、ローカル側がホストとなります。2026年3月には、山口県の長門湯本温泉で一泊二日の合宿を行い金融機関、ファンド、街づくりのプレイヤー、地元の旦那衆などが参加して議論しました。

地域資源の価値をステークホルダーで合意し、お茶1杯が1万円超に

和多屋別荘の写真

全国の事例の一つとして、佐賀県・嬉野温泉の旅館「和多屋別荘」が行っている地域価値を高める事例を紹介します。温泉街、温泉文化、お茶文化、茶畑がある地域の特徴を生かして「ティーツーリズム」を立ち上げました。これまでは、各旅館がお茶を無料で出していたため、茶農家の収入は上がらず厳しい経営環境となる中、地域全体のGDPを上げ外貨を稼ぐために、段々畑の上で茶農家が嬉野の文化を語りながら茶を入れる内容で、茶を売るのではなく地域の価値を文化資本として語り、最高の立地でお茶を楽しめます。最初は和多屋別荘内のカフェでイベントを開き、大手カフェチェーンの値段よりも少し高い800円で茶農家がお茶を入れたところ大盛況で、6年間で価値を徐々に上げ、今ではお茶1杯1万3000円まで高めることに成功しています。この成功には、地域のステークホルダーとの合意が不可欠で、800円で成功したことで自分たちの価値に合意し、価値を可視化して売り上げにつながっていくことで高まっていきます。時間はかかりますが、合意の下で値付けすれば価格は下がりにくくなるのです。合意なく上げれば失敗したらゼロに戻ると考えています。

工場のオープンファクトリー化も地域の価値高める

他の事例では、石川県金沢市の繊維メーカー・カジグループが2024年に開設した国内最大級の産業観光施設「KAJI FACTORY PRARK」があります。70億円をかけて本社をオープンファクトリー化したもので、地元の人に開いた場所にすることで、社員が緊張感と誇りを持てるようにし、自分たちの世界観を世界に理解してもらうことで単価を上げることに成功しています。岡山県玉野市の株式会社パワーエックスも見せる工場づくりに努めており、工場内にカフェを誘致するなど、働く場所と地域をつなぐことで企業としての価値を高めています。

また、兵庫県神戸市の小学校の廃校を地元の工務店がリノベーションし、教室を水族館、体育館をフードホール、クラフトビール醸造も運営している事例もあります。短絡的に儲かる事業はワンルームマンションですが、人口が減少する中で地域の賑わいをどうつくるかを長い時間軸で見て次の世代がどう暮らし、その時に自分たちの事業がどうあるべきか社会合理性を考えて挑戦しています。

京都府で銭湯を運営しているチームもあります。「サウナの梅湯」を承継し、月間売上高80万円だったのを800万から1000万円にまで伸ばしました。これは、銭湯のビジネスは水道代と燃料費が高いが変動費は少く、客を獲得すれば黒字になるものですが、人口減少による客数減をカバーするために、5000円のTシャツや手ぬぐいなどのグッズ販売に注力しました。ファンを取り込んで銭湯を成り立たせているのです。銭湯や喫茶店など地域にあったらいいよねと思えるスポットをビジネスとしてどうアップデートしていくか考えていくことも重要です。

基調講演

株式会社点々 取締役 羽田 知弘氏

株式会社点々 羽田 知弘氏の写真

耕作放棄地、未利用資源を生かして平飼い養鶏

鶏小屋の写真

今日は、鶏と卵の話をしたいと思います。私は、愛知県津島市出身で2015年に岡山県西粟倉村に移住しました。株式会社エーゼログループに入社し、木材営業、イチゴの生産、レストラン運営、くくり罠の漁師などを経験しました。その後、モモやブドウなどの産業ではなく、耕作放棄地や未利用資源、産業廃棄物などの一般的に価値がないとみなされている地域の資源を編集しながら生業をつくることを志し、2024年11月に平飼いの養鶏事業を開始しました。

西粟倉村は、600世帯人口1300人で移住者が270人と20%を超える小さな村です。平成の大合併で他の市町村との合併の道を選ばず、2008年には、50年前に子や孫のためにスギやヒノキを植えた人々の思いを大切にしてもう50年かけて立派な森林に育て上げていく「百年の森林(もり)構想」を掲げて地域の価値向上に取り組んでいます。大半が山で土地がないため、年商100億円の工場を誘致するのではなく、年商1億円の企業を100社つくることに取り組み起業家を支援しています。現在では、移住者や地元からの独立など60くらいの会社や個人事業が立ち上がり、年商25億円くらいの規模となっています。

地域の産業から出る廃棄物を餌に加工し循環型ビジネスを成形

養鶏に着目したのは、日本人は1人あたり年間320個の卵を食べる世界4位の消費量を誇り、毎週のようにスーパーで買っている一方で、鶏が何を食べてどんな環境で育っているのか知られておらず、西粟倉村の地域資源を生かすことで透明性の高い養鶏業が確立できると考えたからです。国内の養鶏業の99%が狭いケージで飼っており、実際の現場を見た時に「こんな環境なのか」と衝撃を受けたことや、ヨーロッパ中心の30カ国では動物福祉の観点からケージ飼いが規制されていることもあり、「10年、20年後も日本人は卵を食べ続けられるのだろうか」と疑問を感じました。また、自分でふ化させて飼い始めた経験があったこともきっかけとなりました。

たまごかけご飯の写真

耕作放棄地を購入し、鶏舎を3棟建てて現在は1200羽くらいを飼っています。養鶏業は全コストの6割が餌代で、そのおよそ9割を外国に依存しています。餌の価格が10円上がるだけでも倒産してしまう不安定な構造となっています。当社では、海外に依存しなくてもできるよう、地域から出る規格外のくず米や米ぬか、酒造会社から出た酒粕、食品加工会社の白菜の外葉など従来廃棄されているものを仕入れて自家配合した発酵飼料を使用しています。平飼いでストレスなく健康に育て、栄養価の高い餌を与えることですっきりした味わいの卵で10個1404円ですが県内の百貨店やスーパーなど販路を徐々に広げており、原宿に店舗を構えるミシュランシェフも購入してくれているなど評価されています。白身も使用した1瓶1500円のマヨネーズも人気です。鶏は、何でも食べるため、魚の骨や柑橘類の皮などさまざまな産業の廃棄物の課題解決にもつながり、糞は堆肥化して米作りに活用するなど循環させています。

平飼い養鶏を中山間地域農家の救世主として広めたい

今後は、鶏のオーナー制に切り替えて、200羽に200人のオーナーを募集し、卵と産み終わった後の鶏肉を配分していく計画です。現在は、年間売上高2000万円ですが、来年は4000万から5000万円、3年後には1億円を目指していきます。宿やレストランなどにもチャレンジします。

米は1000平方メートルあたり450キログラムくらいの収穫で西粟倉では12万円の売り上げですが、養鶏は同じ広さで年間1500万円くらいの収入が得られます。365日休みはないですが重労働もほとんどなく、現在も60、40、10歳代と幅広い年代の方が勤めており、車いすの高齢者でも働くことができます。鶏舎を建てれば毎日仕事があり、短時間からでも働ける中山間地域農家の救世主になりえるビジネスとして全国に広めていきたいと思います。

パネルディスカッション

山と本と株式会社 代表取締役 山本 雄生氏 × 株式会社点々 取締役 羽田 知弘氏 × 株式会社ちゅうぎんキャピタルパートナーズ 取締役 石元 玲氏

左から石元氏、山本氏、羽田氏が並んでいる写真
パネルディスカッション中の写真

石元:山本さんが考える地域での価値づくりについて改めて教えてください。

山本:重要なのは地域資本、場所資本、経済合意で、どう価値にしていくかです。嬉野の例では、地域の方が「うちには何もない」と認識していましたが、外の人から「温泉や茶文化は価値がありますよ。すごいですね」と言われたことで初めて資本として認識しました。認識後は、中の人が価値に根付けをしないといけません。外の人から「価値があるので1万円で売りましょう」と言われても、値付けに自分たちが合意しなければ地域に価値は残りにくいのです。

羽田:卵の場合でも「3から4倍の価格で売れるわけはない」と言われるが、実際当社の場合は1個100から130円などで売れています。市場と比較して値付けしがちで本当の価値を自分たちで決めていくべきだと思います。

石元:ところで、西粟倉村にはなぜ移住者が多いのですか。

羽田:私の場合、林業に関わりたくて三重大学で勉強し、全国の林業の現場を見て回る中で15年くらい前に西粟倉を訪れました。何もないが何かをつくろうとしている村の取り組みに希望を感じ、大学卒業後にいつかは合流したいと思っていました。エーゼログループの牧社長に誘ってもらい住宅メーカーを辞めて移住しました。

山本:西粟倉村の取り組みは全国的にも有名で、人口1300人を売りにローカルスタートアップを促進しています。

羽田:スタートアップの業種としては、鹿皮のレザー、地域の森林資材を生かした香りづくりや帽子づくり、デザイナー、ドローン事業などさまざまで、林業のイメージが強いですが森や森林に関係ない事業も生まれています。

石元:点々さんは未利用資源を餌に加工していますが、味をどう安定させていますか。

羽田:一般的な養鶏はトウモロコシなどを配合した鶏の餌製造会社がつくった飼料を使うため、鶏が夏バテをしていても、ビタミン剤を飲ませたり、食欲が落ちていれば匂いを付けるなどしか方法がありません。当社の場合は、体調を見ながら自分たちで栄養バランスを整えることができます。原料を集めるのも混ぜ合わせるのも大変ですが、地域によって未利用資源は異なるため、味に差もできます。99人に断られても1人が買いたいと言ってくれる方が良いと考えており、徐々にマーケットを広げていきたいと思っています。

石元:地域活性化は点でなく面で考えるべきか。

山本:ローカルだから事業が小さいということはなく、ファーストリテーリングやニトリも元は地域企業です。経済圏を地域でどうつくるかを考えた時に、観光や食は面白いと感じており、商店街に魅力的なお店が2、3店できると変わってきます。最初の3店舗をどうつくるかが重要なのです。成功した事例として行政発のプロジェクトもゼロではないですが、基本は民間発で民間が主導して行政がサポートする形が多いです。地方での首長の権限は大きく、選挙で変わると方針がすべて変わることもありますからね。変わっていこうと住民の合意を得て、10年、15年と時間をかけて取り組んでいくことが重要です。

会場の皆さんの集合写真
左が山本氏、右が羽田氏のツーショット写真