岡山市では、令和4年3月に策定した「岡山市海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」に基づき、「資源循環」「海洋流出対策」「連携協働」を軸に海ごみ問題に取り組んでいます。
岡山市は、旭川や笹ヶ瀬川などの河川に、延べ延長4,000キロメートルにもおよぶ水路網が流れ込んでおり、陸域から海洋に向けてごみが流出しやすい地理的特徴があります。
しかしながら、市域が789.95㎢と広く、水路延長も長いため、河川等に堆積するごみの状況を調査し、現状を把握することは人員や費用面から難しいといった課題がありました。
そこで、市域の概況を把握するため、既存の航空写真をAIで解析し、ごみが集中している場所「ホットスポット」を検出する試みを行っています。
航空写真を解析し、ごみが写っていると考えられる場所を赤枠で囲んでいる。すべての場所にごみがたまっているとは限らないが、河川の河口部ほど多く検出されており、一定の傾向を読み取ることができます。
笹ヶ瀬川や倉敷川のように直接海に流入しない河川では、比較的多くの検出個所があり、ごみが漂着し、集積しやすいと考えられます。
試作したごみ(ホットスポット)の分布地図は以下から
https://www.google.com/maps/d/u/0/edit?mid=1yhijF885oZE3p5KL134WJBGoNfJFN14&usp=sharing別ウィンドウで開く
河川の水辺には背丈ほどある葦などが生えており、通常は近づくことができず、現地調査は困難ですが、上空からの調査ではごみを検出していました。
そこで、葦などが枯れて、水辺への到達ができる2月12日、13日に、作成したごみの分布地図と実際の状況を照らし合わせる現地調査を行い、流域への漂着ごみが散見される倉敷川や笹ケ瀬川、百間川などの状況を確かめました。
岡山市域を流れる県道21号線から下流の9箇所を調査しました。
倉敷川の水辺は、水域内に土砂が堆積し、葦などが生育している場所が多く、上流から下流まで一様に漂着ごみが確認できました。
水辺の状況
漂着ごみ
水辺の状況
漂着ごみ
倉敷川に流れ込む用水路
漂着ごみ
水辺の状況
漂着ごみ
水辺の状況
土手の上に漂着ごみ
水辺の状況
漂着ごみ
水辺の状況
漂着ごみ
水辺の状況(下流に向いて撮影)
水辺の状況(上流に向いて撮影)
倉敷川に流入する河川
オイルフェンスに堆積したごみ
倉敷川の河口近く
水辺の状況
河川側の石垣内にはペットボトルなどの漂着ごみを確認できたが、上流域のように密集して堆積していない。
また、水面を浮遊するペットボトルなども見つけられなかった。
ペットボトルなどの海ごみが、河口まで流下する間にどこに行っているのか検証する必要がある。
なお、児島湾締切堤防には、海側へ水生植物のヒシやホテイアオイが流出しないようにオイルフェンスが張られている。
漂着物などは定期的に刈取船で回収作業が行われているが、その際にもペットボトルなどはあまり見られないと聞いている。
海側の護岸
河川側の護岸
石積内の漂着ごみ
オイルフェンス付近の様子
河川側の締切堤防
河川側の水辺
児島湾締切堤防から上流に向かって撮影
海側の水辺
笹ヶ瀬川では、水面を浮遊する漂流ごみが確認できた。
笹ヶ瀬川は岡山市域のみを流れているため、岡山市内からのごみが継続的に流出していると推測される。
水辺の状況
漂流ごみ
水辺の状況
ボランティアと区役所が連携して定期的な清掃を行っている
百間川では清掃活動が活発に行われており、AIで検出した場所にごみを確認できないこともあった。
また、護岸の整備が行われている場所には少なく、土砂の堆積場所に多くのごみを確認できた。
百間川に流入する水路
水辺の状況
百間川に流入する水路
水辺の状況
百間川に流入する水路
通年コンスタントにごみが堆積する場所
<補足>
上記のポイントをごみ回収されている方から写真の提供がありましたので、回収前の状況を紹介します。
ごみ回収前の状況
漂着ごみがある普段の状況
ポンプ場からの排水口
(訂正前)護岸内の漂着ごみ
(訂正後)清掃ボランティアが仮置きしているごみ
<補足>
上記のポイントをごみ回収されている方から写真の提供がありましたので、回収前の状況(撮影日:令和6年3月16日)を紹介します。
調査時点の状況は、可燃ごみを回収し、不燃ごみを後日の回収に残していた。とのことです。
約1ヶ月で写真の状況になるそうです。
ごみ回収前の状況
放水後のごみがある状況
水辺の状況
漂着ごみ
水辺の状況
調査ポイントから上流を撮影
帰路のロードサイドには、多くのポイ捨てごみ
格子状に70枚に分割
格子状の1枚。この画像にホットスポットが「ある」か、「ない」かをAIに学習させる。
岡山市が、令和2年度に市全域を撮影した航空写真。
AIモデルの構造として、「RegNetY」「EfficientNet」などのAIモデルに対して追加学習を行うことによって開発を行った。
いくつかのモデルを試した結果、最終的に「RegNetY_040」のモデルが最も精度がよかったため、このモデルを採用した。
AIの学習に使用した答えと、AIが解析した答えを照らし合わせてみることで、AIの精度がわかります。
今回の解析では、13,877枚の画像のうち、13,589枚を正しく判定しており、その正答率は97.9%になります。
実際にごみが「ある」 | 実際にごみが「ない」 | |
---|---|---|
AIがごみが「ある」と判断 | 269 | 185 |
AIがごみが「ない」と判断 | 103 | 13,320 |
岡山市が、平成26年度、平成29年度、令和2年度に市全域を撮影した航空写真。
Maxar Technologies Inc.が提供する World View-3の高解像度の衛星画像。
World View-3は、パンクロマチック(可視光)の最高解像度が31センチメートルという商用では最も解像度がよい画像で、カラー画像のマルチスペクトルの解像度は1.24mとなっている。
前年度の解析では、単年度の画像だけでの分析だったため、その時点でのごみの位置を検出してしまい、現地に行った際にごみが存在しない問題が発生していた。
そのため、複数年度における画像を解析することによってごみがより溜まりやすいポイントのみを検出することによって、過検出を減らす試みを行った。
具体的には、各年度の航空写真を開発したAIモデルに通し、それぞれの年度でごみの位置を特定した。
そのポイントのうち、すべての年度でごみが検出された箇所をごみがより溜まりやすいスポットとして抽出した。
一方で、この処理により、モデルが検出できなかったスポットを見逃す可能性が多くなったため、その対策として前年度に開発したモデルの改良を行った。
A. 使用したAIモデルの構造を変更し、最新のモデルを利用した。
B. AIモデルの検出漏れを少なくなるように、パラメーターの調整を行った。
単年度での解析結果
複数年度での解析結果
岡山市では、市域全域の航空写真は、3年に1回の頻度で撮影している。
そのため、高頻度での継続的な観測を行うことが課題となっている。
その解決策として、任意のタイミングでの画像を取得できる衛星画像での解析を試みた。
モデルの学習に使用した令和2年度の航空写真と、令和5年度での衛星画像には、護岸の整備など現地の状況に大きな変化が見られたが、ごみをキャッチする網が設置された場所では、ごみのホットスポットが検出された。
衛星画像で検出したごみのホットスポット
AIモデルの開発には、ホットスポットの画像がたくさん必要になる。
しかしながら、航空写真や衛星画像で確認できるホットスポットは少なく、AIの学習に必要な量の画像を集めることが難しかった。
また、本事業の横展開やホットスポットの画像を集めるため、航空写真をオープンデータとして公開している6都市(長岡市、静岡市、掛川市、半田市、豊橋市、豊岡市、鹿児島市)について航空写真の調査を行ったが、本市のようにホットスポットに特徴的な画像を見つけることはできなかった。
各市ともに、河川が外洋に直接流出しており、河川にホットスポットができにくいと推測される。
そのため、アノテーション作業では、従前の見地からホットスポットとなっている場所は、画像から視認できなくてもホットスポットして学習させるなどの手法で、AIに必要なサンプル数を集めている。
2か年の調査で、岡山市における広域的なホットスポットの傾向は把握できました。
次のステップとして、より現地に近く、ある程度の範囲を撮影できるドローンの活用を検討していきたい。
今年度、試験的にドローンで撮影した画像では、一定量までの堆積であれば、個体の検出が可能であった。
ドローンで撮影した画像からごみを検出
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