岡山市民の文芸
俳句


第40回(平成20年度)
青鷺の一声風の動きけり 高畠 桂子
滝行の草鞋捩れて乾きけり 西山 恵子
通学路たりし故山の真葛原 鍋谷 とみ子
雲遊ぶ八月十五日の山河 井上 みどり
落葉踏むフォークダンスの帰り道 唐川 幹代
第39回(平成19年度)
島渡船日焼満載して戻る 角谷 香泉
開け閉てのたび新涼の水明り 渡辺 悦古
向日葵にむかいて乾く柔道着 毛利  豊
水匂ふ夜明けの棚田ほととぎす 嶋村 香魚
介護終へ夜風の涼し通用門 西山 恵子
第38回(平成18年度)
嫁ぎ来てはや米寿なり稲架月夜 本城 道正
祭笛酢をうつ飯の光り立つ 岸野 洋介
栞ひも引いて本閉づ合歓の花 西山 恵子
鱧料理まず包丁を研いでから 篠原 和子
ショパンまだ弾けず少女の夏休 柴田 久子
第37回(平成17年度) 
岡山に住み白桃を丸かぶり 三好 泥子
母呼びに来て袋掛け少しする 石原 壽志
虫を飼ふ子の眼がむしになってくる 毛利 廣子
賞品は桃の六つやフェスティバル 福光 繁子
ハードルを越えて夏草へと転ぶ 船越 洋行
第36回(平成16年度)
たけのこをたいて息子の下宿去る 原田 満理子
昼寝してゐる間に野良着乾きけり 倉 秀子
古代蓮能の鼓は破に転ず 平槇 トシ子
省略の極む水着を怖れけり 猶原 茂
新涼のあかりこまめに使ひけり 藤原 節子
第35回(平成15年度)
桜桃や図書館の椅子ひとつ空き 石破 ますみ
釣忍文机といふよりどころ 有吉 照子
カサブランカあめの暗さを寄せつけず 児子 宣子
青柿の拗ねたる如く落ちにけり 斎藤 庫治
祭太鼓打つとき「昔男」なる 福場 恵美子
第34回(平成14年度)
白桃をもいで野山を軽くせり 角谷 香泉
トラクターの轍の痛き冬田かな 村瀬 憲正
試歩の径いつしか虫の径となる 守屋 英子
うちの子になりきっている青蛙 金光 幸
桐筺は母の衿入れつくつくし 平槙 トシ子
第33回(平成13年度)
教室に魚臭もち込む夜学生 神崎 カヨ子
椅子一つ占領したる夏帽子 片山 皓右
冷奴くずして妻には言えぬこと 毛利 豊
手をあげて旧友と会ふ巴里祭 川合 淳之介
ビー玉の落ちて弾みし原爆忌 ??木 峯子
第32回(平成12年度)
陽炎をつきぬけてくる男の子 田坂 正子
花筵花より遠きところにも 佐藤 恭子
カッターシャツパンと叩けば四月来る 小川 一恵
酔芙蓉 め風をほめ老い見せず
宮城 孝子
ひとまづは袋のままの金魚かな 石原 壽志
第31回(平成11年度)
秋暑し目藥逸れてばかりなる 深瀬 としえ
しぐれラジオつければ英会話 矢野 華苗
夕顔の片側明り足すすぐ 難波 栄
緑蔭はたちまち村の集会所 河内 民子
啓蟄や動く玩具も庭に出る 黒崎 輝子
第30回(平成10年度)
つまづきし石光りけり原爆忌 蜂谷 三郎
いつ降りし石の湿りや今朝の秋 内田 蓉子
舟寄せに舟帰りくる良夜かな 間野 久子
けさ秋の駅に積まるる杉丸太 秋山 昌子
蔓で編む篭のかずかず雪解村 西田 恭子
第29回(平成9年度)
朧月砂のトンネルそのままに 馬場 恵子
梨をもぐすこんと抜ける空がある 村尾 英美
地図たどる指の先まで極暑かな 石原 和美
新聞を大きくひろげ今朝の秋 湯本 美恵子
こだはりは角曲がるまで鰯雲 深瀬 トシヱ
第28回(平成8年度)
サボテンの花を咲かせて琴師かな 横山 喜代子
フルートの恋の曲なり冷し桃 田坂 正子
三伏の葬の鉦が谷間より 田邊 善治
宵山やこの日限りの行者餅 田里 瑛子
城見えぬ城のある町夏つばめ 間野 久子
第27回(平成7年度)
ふんわりと藁の灰より春立ちぬ 内田 蓉子
入学といふ美しき別離あり 冨士谷 清也
黒髪のどこまでも黒更衣 横山 喜代子
三伏や笑へば嬰の歯が見えて 西山 満子
大賀蓮見る人垣に市長もゐ 角谷 勉
第26回(平成6年度)
大西日薬舗に古き人体圖 有吉 照子
ぶらんこに母呼ぶ声の揺れてをり 冨士谷 清也
文月や土鈴の音の皆違ふ 大橋 恵美子
鉛筆の芯の匂へる日の盛り 西山 満子
試歩の子と空をひとつに夕焼けぬ 野島 重美
第25回(平成5年度)
焦げ跡の茣蓙敷いてあり地蔵盆 植田 貞子
日盛の校庭に来し檢診車 間野 久子
藺刈焼して檢診を受けてをり 冨岡 道子
枯れ菊を焚く静けさが余生かな 田中 清
法師蝉石切る水のしぶきかな 児山 美佐子
第24回(平成4年度)
けさ秋のさすことのなき髪飾 伊丹 裕子
叱られし思ひ出ばかり夏の川 藤原 一平
羽抜鶏われを忘れてとばんとす 吉行 富子
ふりみふらずみ猫が涼しくゐたりけり 那須 裕子
夏燕硝子器硝子越しに見て 高橋 克子
第23回(平成3年度)
干梅や一度かぎりの母の文 佐伯 伸子
赤い靴藻にからまりて盆が来る 三宅 清子
遠き日の見ゆる棚田や終戦日 垪和 恵三
船倉に船の見へざる秋暑かな 伊丹 裕子
水中に庭師の砥石蝉時雨 大岩 節子
第22回(平成2年度)
夏萩や門標小さき女文字 吉川 博基
秋の蚊の潜んでをりし流人墓 磯島 秀子
一山の法師蝉鳴き骨納 冨岡 道子
三伏の槙黒々とみじろがず 佐藤 かよ子
夏帽子脱いで画廊の人となる 国富 源太郎
第21回(平成元年度)
無口なる石工炎暑の石を積む 福田 
病名を告げられし夜の鉦叩 坪井 珠城
流人墓晩夏の蝉の鳴くばかり 磯島 秀子
塩壺に塩足し迎ふ原爆忌 西浦 輝馬
爽やかに童話作家のサイン会 岡本 一代
第20回(昭和63年度)
香水に女の気負ひ見えにけり 田村 英子
石女に夜の深みゆく水中花 吉永 暁史
星祭り姉妹多感に育ちけり 赤澤 千鶴子
春寒や柩にをさむベレー帽 明楽 花子
一葉して天上の紺ゆるぶかな 槌田 多鶴恵
第19回(昭和62年度)
新絹の匂ひの中に星祭る 赤澤 千鶴子
血圧の薬切れいし残暑かな 吉川 博基
六十は遊びざかりや秋桜 田村 英子
秋風や乳房なき胸抱き睡る 江木 菊枝
春愁のレモンとなりて浮びをり 吉川 澄子
第18回(昭和61年度)
掌にうけて夏蚕つめたく動きけり 岡崎 九雨
多佳子忌の紅拭き落す夜の鏡 高草 美代子
点滴の音を聞き居る残暑かな 三宅 成行
撫子や蔵より河へ石の階 重松 勝
夏休騏??の影が檻を出て 金尾 やよひ
第17回(昭和60年度)
夏蝶の力青歯朶蹴って去る 在木 美和子
サングラスはずして人の顔戻る 吉田 六彦
花茣蓙の端がめくれて海鳴りす 花房 八重子
でで虫の殻の触れ合ふ暑き夜 北川 歳昭
裏庭のつくつく法師喪の煮炊き 重松 勝
第16回(昭和59年度)
能面に人の匂ひや寒椿 金尾 やよひ
晝の虫一尋づつに網たたむ 大岩 節子
ゴキブリを打ち損じては恙なし 片山 綾子
手車を躱せば桃の香りけり 曽根 薫
大瓶に天水満てり秋の雲 三村 安三
第15回(昭和58年度)
藺田を刈る母がもっとも泥に濡れ 小田 登志男
隣り田に白鷺遊ぶ慈姑掘る 松崎 利子
藩の井を守り継ぐ庭籾を干す 小泉 節子
ひぐらしのこゑ森閑と茶祖の寺 矢尾 清子
透かしみて露草なりし団扇かな 野崎 加栄
第14回(昭和57年度)
夏雲やかたまりやすき唖者聾者 藤井 正彦
屈葬のごと端居して世に疎し 松島 東邑
もらい風呂柿の若葉に灯のうつる 大岩 節子
そのままに亡き父の籐寝椅子あり 児島 倫子
岸離れ囃し始めし祭船 藤原 亀三郎
第13回(昭和56年度)
継ぐ継がぬことは子まかせ田草取る 橋本 豊水
つかまんとして芋虫に叩かるる 小泉 節子
入園児早も水疱瘡貰ひ 小野 ふみ
夏痩を故山の風に癒しけり 佐藤 恒子
山間ひに温泉の町ありて花の冷 野崎 加栄
第12回(昭和55年度)
渡り鳥過ぐ夕暮の河口かな 松崎 利子
句碑を守る萩とし育ち紅濃ゆく 松本 静代
神呼びの声おうおうと紀元祭 松島 東邑
松植えて庭定まりぬ鰯雲 三村 安三
手入れせぬ薔薇奔放に蕾持ち 竹村 道子
お屋根替終りし宮の夏祭 山方 たつゑ
寝るつもりして寝れぬもの昼寝とは 安原 早苗
一蔓に一つのメロン夕日映ゆ 中尾 錦苑
月見茶屋明るく灯し月未だ 浅原 ちゝろ
第11回(昭和54年度)
透明に明け来て桐の実の青さ 真砂 武津子
山間のセメント工場紫苑咲く 佐藤 かよ子
夜の色としての秋草灯の窓に 富永 芙弥子
花蕎麦や棚田一枚ずつ暮れて 槌田 多鶴恵
木舞組む松の手入れの音のなか 藤原 美規男
峡の温泉の紅葉急いでをとらぬ景 上田 はるひ
初紅葉西行桜とや言へる 川口 澄子
案山子より汚れし老婆畦を行く 布引 霖風
こほろぎや酒量落ちたる兄おとと 松岡 参三
回峰の行者径をや霧深し 池田 清
第10回(昭和53年度)
粉碾唄つぶやき母が小さくなる 小田 登志男
奥飛騨の青しと思ふ宿の月 木下 博
秋茄子を生らす手入れをして居りぬ 服部 茗荷子
秋冷の今昔を出す製材所 藤原 美規男
釣り上げし鯊むらさきにきらめけり 黒原 山桜子
法師蝉鳴けば熟柿に味のると 磯島 秀子
鈴虫を庭に放して旅に立つ 児島 倫子
気にかかる病でありし蟲鳴いて 水島 艶子
輝けり菊のつぼみの固きまま 上田 智恵子
黒葡萄心易さの膝くづす 片山 綾子


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