石の嫁ぎ先

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ロシアのサンクト・ペテルブルグ市へ

  大阪市は昭和54年(1979)にロシアのサンクト・ペテルブルグ市(旧称レニングラード)と姉妹都市縁組をしています。昭和62年には長居公園にある「友情の像」の寄贈、平成2年には国際花と緑の博物館で姉妹都市庭園の出展を受ける等、文化やスポーツの交流を行っています。
  平成15年5月には建都300周年を迎えるにあたり、友好関係の証として石灯ろう1基を寄贈することになりました。近代に活躍した造園家小川治兵衛が作庭した「慶沢園」(天王寺公園内にある旧住友家庭園)に設置してある雪見灯ろうを模して作ろうということになりました。素材の石も大阪城の石垣に使用されている石と同じ産地と言うことで犬島の石を使うこととなりました。
  大阪城では畳50枚ともいわれる大石が犬島から運ばれていて、灯ろうもでっかい物をという事で決定しました。 現在は人気の良い赤いさび石やピンクの石もありますが、やはり白い石がいいと、平成14年後半より作業が始められました。
  なにしろ笠の部分の直径も約2.1メートルもあり、石職人さんはこんな大きな灯ろうを作った事がありません。荒石は倍以上の大きな物を切り出しました。設計図だけでは見当がつかないようで「イメージが湧かない。イメージが湧かない」としきりに言っておりました。ダイヤモンドワイヤーソーという石を切る機械である程度の形を切ります。それを昔ながらの方法でノミ跡を入れていきます。
  ダイヤモンドワイヤーソーで作業する職人さんとツチとノミを使いカッチンカッチンと切る職人さんとは考え方が違うようで、何回も何回も話し合いが行われていました。試行錯誤の末やっと高さ2.4メートル、重さは約9.7トンの石灯ろうが完成し、大阪城へ持って行き組み立てました。
  それから平成15年3月に神戸港からプサン経由で1か月以上の船旅でサンクト・ペテルブルグ市へ到着しました。
  6月には記念式典が行われました。大阪市長さんをはじめ日本からも関係者が出席され、文化交流事業を始めとする記念行事が行われました。大阪市の職員の方からお誘いを受け、こんな機会に是非参加しなくてはと意気込んでおりましたが、30名募集のツアーに少人数の参加しかなく取りやめとなりました。
  施工主の中村石材工業株式会社の西川社長のお話で、無事記念公園の中央に設置された旨お聞きし、ほっとしました。800の橋と石造建築が調和する美しい水の都。ぜひ次の機会に訪れたいと思います。
  400年前から大阪城の石垣、明治時代には大阪築港の造営で、今の大阪の繁栄の基礎となった犬島の石。そのような歴史があったので選ばれてのだと思います。大阪市とサンクト・ペテルブルグ市の友好はもとより、日本とロシアの交流がより一層深まることを心より願っております。

大阪城公園内に仮設置された石灯ろう
(現在はありません
)

 

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