石の嫁ぎ先

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佐伯町ふる里会館「石柱や土台などに使用」

 「ふる里会館に犬島の石が使われとんで一ぺん見においでんせぇ。」
と佐伯町の浦上さんよりお誘いがありました。佐伯町といえば岡山県自然保護センターがありタンチョウヅルを飼育しています。山々に囲まれた静かな田園地帯の県道岡山吉井線を車で走り、佐伯町岩戸のふる里会館をお訪ねしました。
 ここは天神山のふもとにありました。昭和8年から昭和38年まで山田村役場として使われておりましたが、昭和60年に「民俗資料館・佐伯町ふる里会館」として保存される事になりました。
 天神山は戦国時代に宇喜多直家によって滅ぼされた浦上宗景の天神山城の跡があります。この資料館には天神山城跡から出土した品物や機械化が進む前の農具類などがありました。
 明治様式建築の洋館で犬島の石は正面玄関の階段、その上にアーチのように左右対称で石の柱で造ってあります。3階建てを支える土台は高さ約1メートルの石組みで、見るからに犬島の石とわかる花崗岩できっちりと江戸切りの石組みで造られています。当時はこのあたりではハイカラな建物だったでしょう。
 江戸切りとは目地を引き込ませて石の表面をふっくらと突き出させていて、犬島の中でも門柱等にこの切り方が使われています。この江戸切りで切った石で積んだ組み方をイタリアのルネサンス期の壁面に多く使われていて「ルステイク積」と呼ぶそうです。
 「この石材を運搬するのに、2頭立ての馬車で運んだという事じゃあ。」
と浦上さん。当時の道路は今のように舗装されてなくじゃり道でした。馬車の輪もタイヤでなく、鉄の輪で重い石を積んでいる馬車は2頭の馬で引っ張ってもなかなか進まなく大変な事だったでしょう。石組みは65年を経た今でもいちぶの隙もなく洋館をしっかりと守っています。

佐伯町ふるさと会館

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