石の嫁ぎ先

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鰹の供養碑 「生き生きとした姿に似る」

  「鰹(カツオ)の供養碑にうちの石を持っていったので、招待されてね。沖からとって来たばかりの生きのいい鰹をその場でタタキに料理して食べさせてくれたのよ。あの味は最高で忘れられないわ」と、東田石材の輝子夫人のお話。地図を見ると中土佐町は、高知市より南下して須崎市を通り須崎湾に面した町です。土讃線で高知まで特急で2時間半、高知から土佐久礼駅まで1時間弱の列車の旅です。調べてみると「5月第3日曜日はカツオまつり」、とあるので出かける事にしました。
  中土佐町は予想した通り静かな小さな町です。駅から車で5分の八幡宮の側の海辺に、供養碑はありました。偶然に山から切り出すとちょうど鰹がピンピンしている姿に似た自然石なので、記念碑に使ったとか聞きました。さびの赤い色が筋となって入り、最も犬島石らしい特徴のよく出た石で、本当に鰹に良く似ています。
  〔鰹 感謝 供養〕と彫っている書体は、太平洋の黒潮と向き合い堂々と跳ねています。後ろにまわって見ると『この碑は、漫画「土佐の一本釣り」完結を祝う会に集まった大勢の人たちの、鰹に寄せる熱い思いで建立したものです。「土佐の一本釣り」は土佐に住む漫画家、青柳祐介氏がこの久礼の町を舞台に、海にかける若者純平と八千代の生きざまを通じて、漁師町に生きる人々を描いた物語です。昭和51年から平成4年までの16年間にわたり、小学館「ビックコミック」誌に連載されました。』平成6年3月、と刻んでありました。
  惜しい事に青柳先生は、平成13年に57歳の若さで亡くなられております。早すぎる死に心からご冥福をお祈りします。先生もこの碑と共に、土佐の黒潮と鰹を見守っていることでしょう。
  私がうかがったのはカツオまつりの前日でした。町の人々は総出で準備に取りかかっています。1万人の人出を予想しているとかで、2トンから3トンの新鮮な鰹が料理されます。一本釣り競争のさおの用意をする人。大きなかまを並べてご飯を炊く準備等、楽しそうに立ち働いています。明日、是非おいでと熱いお誘いを受けましたが、残念な事に宿がとれなくカツオまつりに参加できませんが、温かい人情と雰囲気だけは味わえました。
  海の上には大漁旗が掲げられ波止には犬島石が使われており、予想していなかったのでびっくりしました。やはり犬島は土佐の港にぴったりだと思いました。明日は供養碑を中心に盛大にカツオまつりが行われるだろうと、後ろ髪引かれる思いで中土佐町をあとにしました。

カツオ姿の供養碑

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