岡山市民の文芸
現代詩 −第51回(令和元年度)−


青へと 高山 秋津



見上げれば
真っ青に刷り上がった空だ
祝福のような青だ
胸の中のコップに
清水が光りながら注がれる
何でもない朝なのに
何故こんなに満ち足りた思いになるのだろう
ここにこうして居るということが
誇らしくさえ思えるのだ
この場所へ私を連れて来た者
私を この美しい空の下へ立たせた者
母がいる 祖母がいる その母がいる
その時 その時
その場にしっかと軸足を置き
揺るぎない強さで歩んできた時間がある
生から生へと繋いできた道がある
彼女たちも空を見上げれば
大空は
厳然と空を湛えていたはずだ
突き抜ける聡明な青に
幾度となく励まされたに違いない

折角の私の存在
私の在り処
今 自分に問えば
答えを告げる声が
空の遥か彼方から聞こえてくる
いや 声のように思えたが
それは
空の粒子が弾ける音だったのか

光を吸って凪いた青は ただ静かだ
空への回帰を秘め
私はゆっくり
青へと溶かされていく


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