岡山市民の文芸
現代詩 −第50回(平成30年度)−


手をつなぐ 三木 茂登子



「ドドンドン・ドドンドン」
「わっしょい・わっしょい」
弾けるような子どもたちの声
今日は保育園の夏祭り
二人の孫が 十五年前に通った保育園の
その孫がいま 大学生と高校生に


昔のまんまの夏祭り
手づくりの大きな紙のみこし
梔子の実で染めた揃いのTシャツ
頭に結んだ鉢巻きに したたる汗が
会場の公園を目指して列は続く


ハヤシライス カレーライス かき氷
食券を求める人の長蛇の列
あっという間に 売り切れの赤い札


会場の隅に作られた お化け屋敷
闇の中から「ドロン・ドロン・ドロン」
「ウァッ・キャー・コワイヨ・タスケテ」
黄色の悲鳴がとどろく


会場の真ん中に どっしり作られた土俵
タオルの褌をしめた 豆力士が睨み合う
行司の大きな団扇が上がる
「ハッケヨイ・ハッケヨイヨイ」
睨み合う豆力士の黒い顔に滝の汗


先生のマイクの声に
怒とうのように人が集まる
花火が始まる
園児の若いお父さんが火をつけていく
「パ・シュシュ・ポーン・ヒューン」
空に向かって次々と
赤い玉白い玉となって飛んでいく
両手を上げて追っかける園児


幼になって 祭りの夜に手をつなぐ
右の手に左の手に
いつもつないだ手をつなぐ







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