岡山市民の文芸
現代詩 −第50回(平成30年度)−


永く永く続けたい 田房 正子



ワタシには 日々やっていることがある
一番長くやっているのは「娘」
もう ベテランの娘である
ベテランでも わからないことが何かと多く
でも ベテランゆえに 素直に尋ねられず
それを見抜き ひょいと出してくれる
母の手に 思いっきり甘えている毎日
次は「事務員さん」
任せてもらえるお仕事があるということは
ありがたく うれしい
キリッとシャープに とはいかなくとも
誠実に 誠実に 全うしたい
そして次は「奥さん」
ウチの夫は ああ見えて 意外に
「ありがとう」をよく言ってくれる
言われて当然の時は「だよね」と思い
そうでない時は いささかこそばゆい
そして次は「母さん」
這えば立て 立てば歩めの親心 の頃を経て
大学生ともなればもう一丁前で
娘二人を相手に 日夜ガールズトークが続く
ちょっと辛口でスパイスが効いていて
はじけるトークが 面白くてたまらない
そして
ワタシのもくろみは さらに続く
この先やってみたいことは「お姑さん」
『娘ムコ』って 悪くない響きではないか
そして「おばあちゃん」
孫とは どれほど可愛いものであろうか
次々と やってみたいことは増えていく
そして どれもみんな失うことなく
全部 全部 続けたい
母がいてくれるから「娘」でいられ
夫がいてくれるから「奥さん」でいられ
娘たちがいてくれるから「母さん」でいられ
家族の協力があるからお勤めにも出られる
みんながいるって シアワセなことだ
誰が欠けても成立しない
この毎日のシアワセを
永く 永く 続けたい








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