岡山市民の文芸
現代詩 −第48回(平成28年度)−


「いいこと貯金」のススメ 田 房 正 子



「いいこと貯金」
それは 相手にうまく届かず
実を結ばなかった優しさを貯めておく
あなたのココロの貯金です
たとえばあなたが
切符の自動販売機の前で
どのボタンを選んでいいかわからず
戸惑っている様子の人を見かけた時
「どうかされました?」と声をかけると
だいたいの人は
「ご親切にありがとう」と言うでしょう
おおかたの人は
あなたの差し出した優しさを
感謝して受け取ってくれるはずです
でも まれに あなたのせっかくの優しさが
相手にとって いらぬおせっかいだったり
相手の望みとは少しズレていて
上手に受け取ってもらえなかった時
「空回りしたなぁ〜やめときゃよかった」と
ふてくされたりしないでください
それは「いいこと貯金」のチャンスです
そう思う代わりに
「いいこと貯金が貯まった!」と思えば
へこんだココロも 少しふくらみ
返品されて お役に立てなかった優しさも
捨てたりせずに
あなたのココロで温めておけば
また次の誰かのために使えます
「今日 貯まった!」と
高校生になるワタシの二人の娘たちが
時々 聞かせてくれます
空回りの 苦笑いのエピソードと共に
それぞれのココロにも
「いいこと貯金」が貯まっています
通帳もなく 目にも見えない貯金ですが
考え方しだいで あなたのココロを
少しだけ晴れやかに
そして ふくよかにしてくれる
おすすめの貯金です






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