岡山市民の文芸
現代詩 −第47回(平成27年度)−


来訪者 七   雲


ようこそ いらっしゃい
いつものように お入りください
片付けの行き届かないところもありますが
あなたの愛用の席は
いつも準備してあります


くつろいでくださいね いつもの場所で
ちょっとご覧になれますか
この向きから見える景色が お薦めです
今日は とりわけ
緑が揺れていますね
季節や天気が 移りゆくそのたびに
私たちが眺めるほんの一刻は
今だけの景色を 広げてくれますね


ここへ到着するまでに
どんな日々を過ごしてきましたか
あなたの心の中の道標は
どんな姿をしているのですか
これから どちらへ向かうのでしょうか


ここにいる間 少しの間
花に嵐のたとえに 私たちは酔いましょう


出発の時間のようですね
ここから見送ります
また 立ち寄ってください
次に会えるときには
あなたも 景色も わたしも
今とは違った姿で ここに集いましょう
どんな景色に 私たちは包まれているのか
その一刻を お楽しみに


自分のためではなく
人のために言葉を使えた日には
心に窓がひとつ増えます
次の来訪が永遠と思えるほど先でも
消えることのない窓の灯りのもとで
私は あなたの席を守り続けましょう





現代詩短歌俳句川柳随筆トップ
ザ・リット・シティミュージアム