岡山市民の文芸
現代詩 −第46回(平成26年度)−


つながる 檀 上 利 恵


髪も上手に結えない私が
見知らぬ誰かのために
ミサンガを編む
あなたたちの手首や足首が
擦れて痛くならないように
一日でも早く願いが叶いますようにと
少しゆるやかに刺しゅう糸を結ってゆく


遠いブラジルの教会のお守りだった
このブレスが時を経て
日本にやってきたこの不思議
願いを込めて手首や足首に
我身の一部として巻きつける
糸が自然に切れた時
その願いが叶うと言われている
祈る気持ちは万国共通


私たちは出会うことなく
この縁を結ぶ
震災の街へと祈りを乗せて
伝えたい想いを
一目一目結んではくり返す


あたりまえに明日は来ると
信じて疑わなかった同志のために
生命を育む大地や海が
一瞬にして何もかも飲み込んでしまった
あの日への鎮魂を込めて


一帯のミサンガの中に
夢や希望や未来があるのなら
微笑みも優しさもぬくもりも
みんなみんなあげよう
私は伝えたい言葉を
おひさまのように
お母さんのように
春咲く花のように結いあげよう
あなたたちが歓声をあげるその瞬間に
私もそっと寄り添っていられますようにと
願いを込めて






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