岡山市民の文芸
現代詩 −第45回(平成25年度)−


真夏の贈り物 栗原由美


山の斜面の畑にはスイカ畑がある
収穫は私の仕事
カラス避けの網は低く巡らせてあり
体をほぼ半分に折って歩く
ラグビーボールのような形のは
脇に一個ずつ抱えて運ぶ
丸くて大きいのはお腹に抱えて運ぶ
何往復もしたところからまた
ネコ車まで斜面を数メートル運ぶ


結構腰にくる
と、腰を下ろした途端
最後のラグビーボールが
ひとりでスタートした
それは
スローモーションのように始まった
行き着く先はネコ車ではなく 溝の中
石橋をうまく渡ればよいけれど
落ちてひび割れる場面をとっさに描いたが
転がる様子がおかしくて
結末はもうどうでもよかった


ゴロン、ゴロンと
バケツや杭に当たりながら転がっていく
アニメーションや映画のシーンを直に
観ているようで楽しかった


ラグビーボールは予想に反して
石橋を軽く渡り
側溝の上の草の上に
見事に着地した


笑いが止まらなくなった
見上げると
ブドウ棚の隙間から
真夏の空も笑っていた


現代詩短歌俳句川柳随筆トップ
ザ・リット・シティミュージアム