岡山市民の文芸
現代詩 −第42回(平成22年度)−


虹いろの糸電話 宮野 恵子


積み重ねてきた 定年後の十三年間
出会って別れ また出会う無数の出会い
ふっと気づくと 百三十七人の子供たちと
絵を描いてきた
ボランティア活動で 子供たちから
無償の愛をもらい 自分を知ることになる


さいしょは みぃーんな おなじだった
みぃーんな はにかんで うつむいていた
さぁ くるまざになって 顔あげて
よっておいでよ


バァーイ バァーイ また こんどね
それが今では もう手のとどかないほど
ちがっている
音量豊かなピアノのように紙にひろがり
ピアニッシモにもフォルテッシモにも響き
絵はリズムを合わせ語りかける


思いがけない色に出会えば 虹と遊ぶ
左右対称に 鮮やかな赤と緑の
補色の緊張感
画用紙の中は それだけで秋の色になる
ぐるぐる回って 宙に浮く
それでも飽きもせず 塗りたくる得意顔


あっ、まちがえたぁー
何がそんなに悲しいの!
グショぬれの 顔 そっとなで
抱きしめる
泣くための涙があるから いやされるのか
泣いて何か うったえているのか
純粋の涙は 柔らかい


きれいだね と声をかけると笑顔になる
幼いこどもたちと 私との間には
ほそい虹いろの糸電話のように
つなぎあっている


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