岡山市民の文芸
現代詩 −第40回(平成20年度)−


ウィンドウ(窓) 奥 山 玲 子


真四角に三角に
ありふれた風景を鮮やかに切り取って
自由自在に加工してくれる窓
私の思いを先取りして
空想の羽根を思い切り伸ばす窓

春は命の萌える木々を映し
夏は生と死の交差する様を見つめ
秋には別れの季節に置いてけぼりをくい
冬 残酷な木枯らしに打ちのめされる

季節がふるう気まぐれな鉈を許し
そこに冷徹なドラマを写しながら
つゆとも揺らがず
一粒の涙も流さず
曇りなき水面を湛え続ける

人の世のはかなさと一瞬を
あざ笑うかのように
永遠の時を持て余し
幾重にも降り積もる記憶に苛まれ
自らの生を問い続ける

がたぴしと音を立て
錆びた錠前を開けて
窓の思いを解き放つ
過去からの風が現在を潤し
木漏れ陽のうしろに
未来が見え隠れする

人は古来住み処に窓を穿ってきた
自然との別離を惜しむためではなく
己れの外へ通じる空間から
時空を羽ばたく自らの変容を
確かめるために




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