岡山市民の文芸
現代詩 −第39回(平成19年度)−


華の道 奥山 玲子


静寂を破り
鋏の音だけが
あたりの空気を切り裂く

あるときは
野にあるままの姿を残し
あるときは
周囲を払う威厳を宿し
花を生ける

ぱつん
余分な蕾に鋏を入れる
ばつん
苔むした老木の枝を
潔く切り落とす

一瞬の心の迷いが
花の生気を奪う
人の心の水面にさざ波が立ち
花の心が血を流す

息詰まる緊張感の中で
人と花がせめぎ合い
限られた空間に
無限の時を創り出す

華の道に
人は生きざまを投影し
赤裸々に自分を告白する
花もまた
人に語らせることで
自らの再生を夢みる

華の道とは
花の心に従い
その在り処をたずねること
その気高さに恥じない技を磨き
常に自分の心と
対峙することかもしれない



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