岡山市民の文芸
現代詩 −第38回(平成18年度)−


無言の未来 奥山 玲子


日めくりカレンダーを一枚破る
未知のインクの匂いに刺激されて
白紙のままの未来が振り向く


昨日までの鮮明な記憶と
不透明な明日という予感の間に
今日という無防備な時が
存在する


時空のしじまを滑り落ちる
一滴の雫を掬いとる
手の平でころがしながら
今日という日に
仕立て上げる


この手から
こぼれ落ちたものたちは
群れて集まり
別の人の明日となる


時間は
過去から未来へ向って
ひたすら流れていくものか


それは時として
私と
私ではない別の人の間を
ゆらぎながら
行きつ戻りつする


私の前に開けるはずの明日が
一瞬の風の悪戯に
かき消される偶然


私の前には
無言の未来が
横たわっている



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