岡山市民の文芸
現代詩 −第37回(平成17年度)−


めざめて 玉上 由美子


失ったものは
三つの臓器
  −母からもらった 甲状腺
  −父から受け継いだ 胆嚢
  −ふたりの子どもを育てた 子宮


得たものは
時間
  −高く咲く ハクモクレン
  −太陽の下の ひまわり
  −鮮やかに舞う 赤とんぼ
  −笑うこと 泣くこと 怒ること
  −明るい 夕暮れ
  −あなたとの 日常


あの日
からっぽになった内臓は
からっぽのままでなく
しなびた肉塊は
しなびたままでなく


点滴からこぼれ落ちる小さなしずくは
「明日」に続く「今日」の私を
音もなくゆっくりと
創りあげ
育てあげ


血が生まれ
血が生まれ
まだまだ
真っ赤な血が生まれ
はっしはっしと
私の体の中を駆けめぐる


丸いライトと眩しい白衣
めざめて
得たものは
「わたし」
まぎれもなく
この「わたし じしん」



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