岡山市民の文芸
現代詩 −第36回(平成16年度)−


三千年の記憶 奥山 玲子


陽の光をつつっと流し込み
すっくと立つ青い草姿
太古の昔と少しも変わらず
土を従え空を射る


文明に薄明かりが差し込んだ縄文期
大陸から半島を経て渡ってきた
最初の一粒が
この島の土に抱かれて三千年
一日として途切れることなく
命のサイクルは繰り返す


その間
ヒトは水を争い
イクサをし
イネを踏み倒す
天は怒り
川は干上がり
イナゴは地上の命を食い尽くす


それでも
イネはあせらない
固いサヤに護られ
ひたすらに時を待つ
遺伝子は自分の使命を忘れない


再び大地が潤い
空に光が満ちたとき
イネは本能に目覚める
剣のような芽が殻をつき破り
ぬかるむ泥土にしっかり根を張る


天に許された自分を確かめるため
大地の呼び声に応えるため
三千年の祖先の誇りを
背負って立つ



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