岡山市民の文芸
現代詩 −第33回(平成13年度)−


サボテンへ 光田 純子


ちくりと
指先から心臓
胸元から脳へ
一秒すら置かず
ひゅんと
指を引いてしまうには充分の
針 針 針
窓辺に置いた鉢植えの
鎧をまとった小さな背
解かれることのない
無数の棘と
人差し指に膨らんだ
一滴の虚無


あふれるほどの水をやれば
少しは優しくなるのだろうか
芽吹いた棘は
内側すら傷つけている
映るのは
そんな有様なのに


泣いているのか
報われない思いを抱え
叫んでいるのか
理不尽な仕打ちに対し
求めているのか
春の陽に似た両腕を


此処はやがて
日だまりを作る窓辺だと
それすらも忘れて


沈黙の背よ