岡山市民の文芸
現代詩 −第33回(平成13年度)−


かぼちゃ 斎藤 恵子


柔らかく
たやすくちぎれる茎が
地を這いながら
触覚のように巻きつくものを探す
頼るところが強ければ
立つ力はなくても生き延びる
黄色い花は香りもなく優美でもない
美しいと虫にかじられてしまう
だれも手折ったりしないから
容易に実がつけられる
大きくなる時は黙っていた方が安全だ
日を浴びると存在感が出る
ずしりと重くなるが
大きくなりすぎるともてあましてしまう
実の内部にはどろどろしたねばりはなく
簡単にわたを除くことができる
単純な性質がエネルギーをつくる
くりぬくと夢を詰めこむこともできる
さくさくとした容器になる
しめっぽい秘めごとや
広大な望みは似合わない
似合うとすれば楽しい今日
砂糖をまぶして火にかける
甘さと熱が固い本質を変化させる
涙に似た透明な液体があふれる
固いものほど水気を隠している
純で崩れやすい
煮るとねっとりしてくる
バター状になってくる
甘く品のよい味は
本来持っている美点を
ゆっくりと引き出すようにしないと
なかなか出てこないものだ