岡山市民の文芸
現代詩 −第33回(平成13年度)−


今日という日 高山 秋津


母になった今日という日が 終わる


小鳥の体温のような
夕焼けを浴びて
こころが
ゆっくりと
茜色に染まっていく


わが子を
初めて
抱いた


「はじめまして」


産着から
明日という匂いが立ちのぼってくるようだ
わたしの内部に 今ふつふつと
めざめるものがある
たぎるものがある
あふれるものがある
瞳は 茎のように真っすぐに
乳房だけを見つめているから
こんな透き通った色をしているのだろうか
ヒヨヒヨと柔らかい頭に触っては
いのちの
やわらかさを思う
この泉門から
人の想いは
にじみ出ていくに違いない


抱く時間
抱かれる時間
どちらもまなざしを優しくする
きのうまでとは別の
新しい生きものの眼で
生きもののこころで


ここにこうして在る
ということが
一つの光に なった日