岡山市民の文芸
現代詩 −第32回(平成12年度)−


願い 坂本 遊


とりが
まだ鳥とよばれていないころ
とりは
空を見上げて願うものだった


たかい木のうえの
赤い実を
てっぺんまでぜんぶ食べたい と
かざりのような
かたのふたつのとっきぶつを
ぱたつかせておもった


足のはやいのに
おいつかれて
命をおとす
そんなとき
空に命をつなげたい と
なんのためにあるのかわからない
かたのふたつのとっきぶつを
ふるわせておもった


それから
何千万年もかけて
とりの願いが
すこしづつ すこしづつ
かたちになった
つよい願いが
ほねになり
はかない願いが
からだをつつむ
やわらかなものを生み
かたにひろがるふたつの羽根
とりは
願いをかなえるもの
鳥になって
翔びたった