岡山市民の文芸
現代詩 −第31回(平成11年度)−


軌跡 光田 純子


ガードレール沿いに
葉桜の海を抜け
そびえる鉄塔を一目散
南風を味方に
雲を突き抜けられたら
どんなに気持ちいいだろう


横たわる地平彼方の消失点
東西南北に流れる風景が
交わるあの一点
虹の足元のように
いくら走ってもたどり着かない
あの消失点をこの手につかめたら
どんなに気持ちいいだろう


この魂は
安っぽい欲望に縛られた肉体を破り
高みへと上昇を続ける―…
その願いが叶うなら
何ひとつ確かなものはなくていい


大切なのは魂に忠実に生きること
譲れない何かを心の棚に飾ること


厚い雲を突き抜けるために
消失点をつかむために
まぶたの奥
理想のあの一瞬を
灼きつくほどに刻み
心ひとつでただ歩こう


大地とは
荒野にも楽園にも変わるもの



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