岡山市民の文芸
現代詩 −第31回(平成11年度)−


骨仏 坂本 遊


この世のかたみの
からだを灰にして
灰のなかから仏像をつくる
寺のならわし
こちらの世では見知らぬ人々が
あちらの世では手をとりあい
ひとつになって
美しい仏の姿を写し出す
生者はいつも
みえるかたちをたよりに
生きているから
手にふれるものをたのみに
生きているから


あなたは仏の
重いまぶたのおくで
善とか 悪とか
識別もせず
半眼の虚空にただよう
仏の両肩のなだらかな稜線を
鳥たちの足場に与え
この世のさえずりを懐かしむ
そのてのひらに
わたしの祈りをのせて


かつて生あるとき
あなたはいつも同じ処にはいない
つねにわたしの思いの先にいた
仏のからだに住まう 今
あなたは いつもそこにいて
わたしの思いと共に
いてくださる


*恩師・辻正弘氏への鎮魂



短歌俳句川柳現代詩随筆目次
ザ・リット・シティミュージアム