岡山市民の文芸
現代詩 −第30回(平成10年度)−


セピア色の記憶 福島 京子


漠々とした
想いの中に
しめった焚き火のような
感覚が
出口を探して
かけ昇ってくる


月日と共に
刻み込まれる
皮膚の深みに
澱のように張りついて
又一つ
仮面を厚くする


さわやかな五月の風と共に
思い出される想い出は
いつの日か
セピア色に変わり
屈託のない日々を
埋め尽していく


コロコロと
笑いころげた日は
まるで遠い世界のことのように
少し大人びた
輪郭だけの私を
作り上げていった


とぎれた記憶のその先を
手さぐりするような
もどかしさ
金縛りにあったように
なにも出来ないくやしさが
身体の中を
はい上がってくる


いき場のないいら立ち


攻撃はいつも
過去へ向いて走る



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