岡山市民の文芸
現代詩 −第28回(平成8年度)−


肌色のパンティストッキングをはぎ取って 小椋 貞子


肌色の
パンティストッキングを
左足からするするとはぎ取って
私から私を解放する
いちにち
閉じ込められていたものがほどけて
新しい空気を吸い込む


窓を開ければ
かすかな雨の匂い
とけるような安堵感が
あふれてくる夕まぐれ


強い自分だと思っていた
人々から離れても
生きてゆける自信があった
群れの中の自分など
絶対否定をしつづけていた


けれど今
ざんげに似た思いが
あふれてくる
テーブルの上のマスカットひとつぶ
手のひらに乗せ
傲慢な自分を一緒にころがしてみる


誰かの隣に存在することで
意味のある人間でありたい
誰かの存在で自分の存在がつながっている
そんな意味のある
人間でありたい


思いあがりの頂点で
私は自分で自分の足にけつまずく
そして
自分の存在を見つめている



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