岡山市民の文芸
現代詩 −第27回(平成7年度)−


発信 中尾 一郎


新聞の一面の右下に
「きょうの天気」が毎日載る
降水確率と共に 人工衛星ひまわりが
昨夜の二十一時に撮影した
空の写真が載る


その空は
毎日届く新聞と同じように
一日として 同じものはない


 創世記の神は ビールを片手に
 微笑みながら 問いかける


 私の創り出した 天と地は
 数え切れない 昼と夜の中で
 アンモナイトの溜息を聞き
 人類の哀しみに心を痛め
 パソコン通信で明日の天気を調べる
 君に出会った


 君の毎日は 私の空のように
 一日一日 違うものを創り出しているか


 君の「一日」は いつも
 発信を続けているのか


新聞を捲りながら
小さな声で 応える


 世界の針の先のような岡山で
 わたしは わたしにしか描けない
 天気図を創ろうとしている


 晴れたり 曇ったりの
 いちにちといちにちを
 重ね合わせながら


 日本の空に発信を続けている
 きっと誰かに届くと信じて



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