岡山市民の文芸
現代詩 −第27回(平成7年度)−


目をとじれば 赤木 貴久子


目をとじれば 風の音 小鳥のさえずり
輪になった人の ざわめき 笑い声
そっと目をあければ 輪の中にいる私
遠くから眺めている もう一人の私
いつから 浮いてしまったのかしら
場違いな思いがつのる
もっと違う 居場所があるよ
出るのなら 今
痛い!
子供の投げた紙飛行機が
頬にあたった痛さなのか
みんなの視線が痛いのか
逃げ出そうとした心を
悟られそうな痛みなのか
動揺を押えて
紙飛行機を投げ返す
浮遊する心を乗せて
スーイ スイ
無邪気な声 無心に追う子らの間を
スーイ スイ
大切に守っていたいものがある
それをなくしたら
自分がなくなってしまいそう
秘めておこう 心深くに
そう思うと 素直になれる
優しくなれる
今なら 平気な顔で そしらぬふりで
輪の中にもどれる
紙飛行機が戻って 前に落ちた
隣の人が拾って 無雑作に投げる
手元がくるったの
そばの小川に落ちてしまった
清んだ水の上を 流れていく
さからわずに ゆったりゆったり
追いかけた子が
足をぬらして拾いあげる
しずくが キラリ
ぬれた紙飛行機も キラリ



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