岡山市民の文芸
現代詩 −第26回(平成6年度)−


流れゆくもの 圓戸 志麻子


私の世界のまん中を
一直線に横切って
伸びやかにつづく 昼下がりの堤防


私の世界のまん中に
ゆるやかな曲線を描きながら
さざ波をたてる この流れ


一瞬にして過ぎていく
水の分子のひとつひとつが
それでもここまでたどりつくのに
どれだけの時を越えたろう


不ぞろいな木々
石組みの土手
匂いたつ草の一面
家並みの声
遠くのビル
行き交う車のクラクション
すべての色に移ろいながらも
綾なす光に輝く青


私の体を
ゆったりと満たしている
透明な水と
つながるもの
時の一点よりはじまり
滔滔として移ろいゆくもの
流れゆくもの


見つめる光景を
ゆっくりと横切って
静かに流れる この思い



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