岡山市民の文芸
現代詩 −第26回(平成6年度)−


一本の矢のように 山本 照子


背中をつうと
滴り落ちるものがある
わたしの今が
過去になったあかしの
時の雫


過ぎ去った日々の
わたしに
逢いたくて
時の雫の水たまりを
両掌で掬ってみる
水は十指を
 さらさら
 さらさら
こぼれるばかり


頬をかすめてゆく
音がある
わたしの今を
うばいつくす
時の
刻まれる音


時を
わたしのものにしたくて
掌に受けてみる
そこにあるものは
風ばかり


 振り返らない
 立ち止まらない


未来へ
未来へと
一直線に伸びている
時の線上を
ひたすらな
想いを抱いたまま
走り抜けて行こう



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