岡山市民の文芸
現代詩 −第25回(平成5年度)−


とどけもの 石原 恵子


この静かな昼さがりの まぶしい道を
道に続く 青々とした田園を
田園をわたる 清涼な風を


とどけたい


小さな窓から見える 青空を友とする
あなたに


ゆっくりと姿を変える 夏雲を
夏雲のもとに広がる 山々を
山々の 濃い葉かげを
葉かげから生まれる 虫の声を


とどけたい


ベッドで 一日すごす
あなたに


金色に傾く 午後の日ざしを
金色にふちどられた すべてを
だんだんに
色を変える 夕暮れを
夕暮れに ともるあかりを
あかりの下の 日常を
あかりの外の
しんとした 夜を


とどけたい


とどけたい


しだいに明けてくる 朝空を
薄紙のような 月を
何の音もない 街を
満ちてくる エネルギーと
昇る 朝日を
あなたに



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