岡山市民の文芸
現代詩 −第25回(平成5年度)−


歯 車 岡田 珠郁


知っていますか
この都会の片隅に
捨てられたように忘れられている
優しさを…
覚えていますか
心の中の遠い記憶
かつて誰もが持ち歌っていた
それを…


いつからだろうか
誰もが持っている
心の中の大きな歯車が
狂い始めたのは…
いつからだろうか
行き行く人ごみの中
誰かの小さな悲しみに
誰もその手を
さしのべなくなったのは…


気づきませんか
忙しさのなか心の片隅に眠る
一番大切なものを
落としてしまったことに…
探しませんか
自分らしく生きる自分を…
狂った歯車をなおすことのできる
たったひとつのネジを…


聞こえませんか
心の中の大きな歯車が
ゆっくりといい音をたてて
回りはじめたのが…


伝えませんか
自分の心の中
ほこりをかぶっている
優しさを誰かに…



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