岡山市民の文芸
現代詩 −第23回(平成3年度)−


迷霧 岩藤 由美子


わたしは
迷霧の中を
漂っている


生きているのは
何のためか
誰のためか
という愚かな問いを
繰り返しているうちに
いっそう深くなった
霧が
わたしの存在を
抹消しようとすることに
抗う気持ちは
ない


けれども
霧の向こう側で
今を生きることに
光の粒ほどの疑いも
持っていないような
小鳥の
翼が欲しい時がある


素肌に
真実を
感じながら
静かに風を聴いている
野の花が
無性に
恋しくなる時がある


わたしは
わたしを
連れ出そうとしているのだろうか



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