岡山市民の文芸
現代詩 −第23回(平成3年度)−


圓戸 志麻子


窓側の席に座って
遠ざかる線路の彼方に
目をこらす
失われてしまった過去に
思いを馳せるように


窓側の席に座って
西の空の赤く暮れゆく様を見る
遠い思い出を
なつかしむように


時は進む
走り去る列車のように
先へ先へと
そして私も
心を一つ処に留めておけない
窓の外を見ていると


引き離され押しやられる
過去を、過ぎた景色を求めて
心は揺れる
窓の外を見ていると


やがて暮色は空全体をおおい
残照さえも消えてゆき
遠くの明かりだけが
標となる頃
ようやく私は自分を取り戻し
柔かい眠りへと解放する



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