岡山市民の文芸
現代詩 −第21回(平成元年度)−


秋の日に 玉上 由美子


耳の外を
野球中継が流れる
心の裏側で
あなたたちのことを思っている


  つぶれた爪―働きすぎたために
  哀しい  目―遠くに嫁いだ娘を想い
  年老いた体―容赦ない日々の流れに


何もかも いとおしく
心の裏側で
私の口が 言い続ける


  おとうさん おかあさん
  故郷の稲穂も 実りましたか
  葱の芳しいにおいが まだありますか
  せせらぎの中を かにが歩いていますか
  そして
  元気でいますか
  笑っていますか


秋の日に


耳の外を
野球中継が流れる
心の裏側が
あなたたちを探している



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