岡山市民の文芸
現代詩 −第20回(昭和63年度)−


コンタクトレンズをはずしたら 時実 育代


コンタクトレンズをはずしたら
世の中がぼやけて狭くなった
全てのものが大きく迫ってくる
ちりひとつない道ですれ違うものは
皆同じ顔をした美しい人たち
眩しすぎて思わずうつ向いてしまった


夜道を歩いていると楽しくなる
三色の光輝くドーナツは
赤青黄の信号機
まばゆい尾をひく彗星は
行き交う車のヘッドライト
光にたどり着くと
いつの間にか通り過ぎ
影だけが意地悪く
笑いながら付いてくる
ちょっぴり怖くなって
足早に歩いてみる
夕げの香りに気がゆるんで
ふと水面をのぞくと
白い魚がゆらゆらと泳いでいた
不思議に思い空を見上げると
白い月がぼやっと浮いていた



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