岡山市民の文芸
現代詩 −第19回(昭和62年度)−


夢野原 岩藤 由美子


振り向いた風が
微笑ながら
夢野原へ手招きする


大木を離れた木の葉のように
わたしは ひらひら舞いながら
風を追いかける


束の間の生―
生い茂った夏草の吐息の中を
縫うように
あなたの口笛が
駆け抜ける


踏みしめる大地もなく
見上げる大空もなく
確かなことの何一つない夢野原で
あなたの傍にいる確かさを
信じよう


白いカップに注がれた
熱いコーヒーに
頬を寄せれば
覚えてしまったすべての言葉が
揺れながら消えていく


風よ
わたしは もう戻れない



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