岡山市民の文芸
現代詩 −第18回(昭和61年度)−


抜け殻 石原 和美


干からびた土の上に
まるで
セルロイドのような
セミの抜け殻が
飾ってある


みてください
みんな
あんなにも たからかに
あんなにも ほこらかに
夏の大気を震わせて
いるのですよ
抜け殻は
子育てを終えた
老母のように
背を丸め
並んで
陽に 灼かれている


やがて 命が樹上に
力尽き
ぎらぎら と かさかさ と
落下してくるまで


陽よ
明るさと 悔恨と
呆けきらめく光の粉で
その身を
満たせよ



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