岡山市民の文芸
現代詩 −第16回(昭和59年度)−


鬼灯 吉永 ゆり子


真夏の
午後の庭に立っていた
寂寥は四囲を包み
身動きできなかった


常に存在しないものを
追いかけてきたようだ
歳月は結晶化を進めるだけで
代価されることがなかった


切札を遣わない
無償の愛を
夢の中の光芒で
手探りし濁望した


女は
絶望と惑いの暗闇を抜け
生を得たとき
業を背負う


時が移り
浄化されても
薄墨色の紗は折り重って
行手を翳す


求め続ける
幻影は
後退りしながら
支配する



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