岡山市民の文芸
現代詩 −第16回(昭和59年度)−


妄想 児山 二重


スイッチを切ると
そこは闇に包まれた
闇を全を抱擁する母胎となった
結跏跌座に胤を結んだ私は
一瞬 胎児に遡った
己の発する母音のリズムは
胎動のように
百八の鐘のように
己を主張し余韻は吸収され成就する


私は父母の恩恵の念と
己の存在の高揚を願い
闇から闇への転落に怯えながら
ただ ひたすら
愛を
つぶらな瞳の開眼を求めていた
パープルに
母胎と別離する瞬間を



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